多言語メニューの誤訳で起きたトラブル実例|機械翻訳をそのまま使う危険性と確認方法

翻訳ツールに任せたメニューが、まさかの誤解を生んでいませんか

ある小さな居酒屋で、こんな出来事がありました。人気メニューの一つ、鶏の唐揚げを、無料の翻訳ツールを使って英語に訳し、メニュー表に載せていました。

ところが、その英語表記を見た外国人のお客さんが、怪訝そうな表情を浮かべたのです。翻訳された料理名は、まったく意味の通らない、不自然な言葉になっていました。

お客さんは、それが本当に鶏肉の料理なのかどうか、判断がつかず、結局、注文をためらってしまいました。

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翻訳ツールは、確かに便利な道具です。難しい英語がわからなくても、文章を入力するだけで、数秒のうちに、外国語の文章を作り出してくれます。

しかし、その手軽さゆえに、出てきた翻訳結果を、そのまま何の疑いもなく信じてしまう事業者が、後を絶ちません。

料理名の誤訳程度であれば、まだ笑い話で済むかもしれません。しかし、アレルギー表示や、宗教上食べられない食材の表記に誤りがあった場合は、話が変わってきます。

時には、お客さんの健康や、大切にしている信仰に、深刻な影響を与えてしまうことさえあるのです。

機械翻訳をそのまま信じて使うことの危うさと、誤訳を防ぐための具体的な確認方法を、実際にあったトラブルの実例とともに紹介します。

なぜ機械翻訳はメニューの翻訳に向かないことがあるのか

翻訳ツールは、日々の会話や、一般的な文章の翻訳においては、驚くほど高い精度を発揮するようになってきました。

しかし、料理名や食材名の翻訳になると、話は少し変わってきます。

日本の料理名には、独特の言い回しや、比喩的な表現が数多く使われています。例えば、「きつねうどん」という料理名には、実際の動物のきつねは一切使われていません。

しかし、翻訳ツールが、この言葉の背景にある文化や由来を理解しないまま、文字だけをそのまま翻訳してしまうと、まったく見当違いの意味になってしまうことがあります。

また、日本語には、一つの言葉が複数の意味を持つ、同音異義語と呼ばれるものがたくさんあります。

翻訳ツールが、その言葉が置かれた前後の文脈から、正しい意味を判断しきれずに、まったく違う意味の言葉として翻訳してしまうことも、珍しくありません。

さらに、食材名の中には、地域独特の呼び方や、専門的な業界用語が使われていることもあります。

こうした特殊な言葉に対して、翻訳ツールは、一般的な意味しか持たない、似たような言葉に置き換えてしまうことがあります。

つまり、機械翻訳は、日常的な文章には強くても、料理名や食材名のように、文化的な背景や、特殊な言い回しが絡む言葉に対しては、思わぬ誤訳を生み出しやすいという弱点を抱えているのです。

多言語メニューの誤訳で起きたトラブル実例

①料理名がまったく違う意味になってしまった

ある和食店では、看板メニューの一つである「親子丼」を、翻訳ツールを使って英語表記に変えていました。

しかし、そのまま翻訳された英語の料理名は、鶏肉と卵を使った料理であることが、まったく伝わらない、奇妙な言葉になってしまっていました。

「親子丼」という名前には、鶏肉の親と、卵の子供という関係性を、日本語ならではの言葉遊びで表現したものです。

しかし、この背景を知らない翻訳ツールは、言葉をそのまま置き換えただけの、意味の通らない料理名を作り出してしまいました。

これを見た外国人のお客さんは、それがどんな料理なのか、まったく想像がつかず、注文をためらってしまいました。

せっかくの人気メニューが、翻訳の誤りによって、お客さんに選んでもらえない料理になってしまっていたのです。

料理名の誤訳は、時に、笑い話のような、奇妙な言葉を生み出すこともあります。

しかし、その裏では、本来伝えたかった料理の魅力が、まったく伝わらないまま、お客さんの選択肢から外れてしまうという、見過ごせない問題が起きているのです。

②アレルギー表示が誤って伝わってしまった

ある飲食店では、メニューの中に、アレルギー表示の欄を設けていました。「このメニューには、ナッツ類は入っていません」という日本語の一文を、翻訳ツールを使って、英語やその他の言語に訳していました。

ところが、翻訳された文章の中には、否定を表す言葉が、正しく反映されていないものがありました。

「入っていません」と伝えたかったはずの文章が、翻訳の結果、「入っています」という、正反対の意味になってしまっていたのです。

この誤りに気づかないまま、ナッツアレルギーを持つ外国人のお客さんが、その表示を信じて、料理を口にしてしまったとしたら、どうなっていたでしょうか。

幸い、このケースでは、お客さんが食べる前に、店員に直接確認したことで、大きな事態にはなりませんでした。

しかし、確認をせずに、そのまま口にしていたら、命に関わる、深刻なアレルギー反応を引き起こしていた可能性があります。

料理名の誤訳であれば、注文をためらわれる程度で済むかもしれません。しかし、アレルギー表示のような、命に関わる情報の誤訳は、絶対に許されるものではありません。

翻訳ツールが出した結果を、そのまま鵜呑みにすることの危うさが、最も強く表れるのが、こうしたアレルギー表示の場面なのです。

③宗教上食べられない食材の表記が抜け落ちてしまった

ある観光地の食堂では、イスラム教徒のお客さんに向けて、豚肉やお酒を使っていないメニューであることを、多言語で伝えようとしていました。

しかし、翻訳ツールを使って作成した文章の中で、「みりん」や「料理酒」といった、調味料として使われるお酒の名前が、正しく認識されず、翻訳結果から、その情報が抜け落ちてしまっていました。

日本語では、「みりん」や「料理酒」は、調味料として、当たり前のように使われています。しかし、これらには、微量とはいえ、アルコール成分が含まれています。

イスラム教の教えでは、お酒は口にしてはいけないものとされているため、こうした調味料が使われていることは、非常に重要な情報です。

翻訳ツールは、こうした専門的な食材名や調味料名を、時折、一般的な言葉に置き換えてしまったり、まったく訳さずに省略してしまったりすることがあります。

この店のケースでは、幸いにも、注文の前にお客さんが直接スタッフに確認したことで、大きな問題にはなりませんでした。

しかし、確認がないまま提供されていたら、宗教上の教えに反する食事を、知らないうちに口にさせてしまうという、大変重い結果を招いていた可能性があります。

食材名の翻訳は、単なる言葉の置き換えではありません。その裏にある、お客さんの信仰や、大切にしている価値観にまで関わる、繊細な情報なのです。

誤訳を防ぐための確認方法

ここまで紹介してきたトラブルは、どれも、翻訳ツールが出した結果を、そのまま信じてしまったことが原因になっています。

しかし、こうした誤訳は、いくつかの確認作業を行うことで、防ぐことができます。

まず効果的なのが、翻訳した文章を、もう一度別の翻訳ツールを使って、日本語に訳し直してみることです。

例えば、日本語から英語に訳した文章を、その英語から、もう一度日本語に訳し直してみます。

訳し直した日本語が、最初に書いた文章と大きく違っていたら、その翻訳結果には、誤りが潜んでいる可能性が高いというサインになります。

次に大切なのが、実際にその言語を話せる人に、内容を確認してもらうことです。

身近に、その言語を話せる知人や、外国人のお客さんがいれば、翻訳した文章を見てもらい、自然な表現になっているか、意味が正しく伝わっているかを、確認してもらいましょう。

翻訳ツールだけに頼らず、人の目を通すことで、機械が見逃してしまう、微妙なニュアンスの違いにも気づくことができます。

そして、最も重要なのが、確認する優先順位をつけることです。すべての文章を、同じように時間をかけて確認するのは、現実的ではありません。

しかし、アレルギー表示や、宗教上食べられない食材に関する表記だけは、絶対に、人の目で最終確認を行うべきです。

命に関わる可能性がある情報だからこそ、ここだけは、翻訳ツールに任せきりにしてはいけません。

料理名の誤訳であれば、後から気づいて直せば済むこともあります。

しかし、アレルギーや宗教に関わる情報は、一度でも間違ったまま提供してしまえば、取り返しのつかない結果につながりかねません。

だからこそ、この部分だけは、必ず人の手で、二重、三重に確認する習慣を持つことが大切です。

翻訳ツールは道具であり、最終確認は人の目で行うものです

翻訳ツールは、確かに、多くの事業者にとって、なくてはならない、便利な道具です。

難しい外国語を、一から学ばなくても、瞬時に翻訳を作り出してくれるその力は、多言語対応を進める上で、大きな助けになります。

しかし、その便利さに頼りきってしまい、出てきた結果を、そのまま信じてしまうことには、大きな危険が潜んでいます。

冒頭で紹介した居酒屋のように、料理名の誤訳であれば、お客さんに選んでもらえないという、悔しい思いで済むかもしれません。

しかし、アレルギー表示や、宗教上の食材に関する誤訳は、時に、お客さんの健康や、大切にしている信仰を、深く傷つけてしまう可能性を持っています。

翻訳ツールは、あくまでも、最初の下書きを作るための道具です。その下書きが、本当に正しいかどうかを見極める、最後の確認は、必ず人の手と、人の目で行わなければなりません。

訳し直して確認すること、実際にその言語を話せる人に見てもらうこと、そして、命に関わる情報だけは、絶対に手を抜かないこと。

この一手間を惜しまない姿勢こそが、お客さんからの信頼を守る、何よりの土台になります。

便利な道具を使いこなしながらも、その先にいる、一人ひとりのお客さんの顔を思い浮かべ、最後まで確認を怠らないこと。

その積み重ねが、これからも、安心して選んでもらえるお店であり続けるための、確かな支えになっていきます。

この記事を書いた人

旅行、観光、IT・Webマーケティングの仕事に25年ほど携わってきた40代。現在はインバウンド対応に悩む店舗・宿泊施設の方々に向けて、実際に使えるツールや方法をまとめています。導入コストや使い勝手を含めて丁寧に検証することを心がけています。