為替レートと外国人客の購買行動の関係|円安が続く今、店舗が意識すべきこと

「うちの店には関係ない」と思っていませんか?

最近、街中で外国人旅行者を見かける機会がずいぶん増えました。観光地だけでなく、住宅街のスーパーや地方の商店街にも外国人の姿が珍しくなくなってきています。その背景にある理由のひとつが、円安です。

円安という言葉はニュースでよく耳にするものの、「自分の店とは直接関係ない話」と感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。

しかし実際には、円安は外国人旅行者が日本でどのくらいお金を使うかに大きく影響しており、飲食店・小売店・宿泊施設にとってビジネスチャンスにつながる要因の一つになっています。

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少し身近な例で考えてみましょう。例えば韓国のウォンで給料をもらっている旅行者が日本に来たとします。円安が進むことで、同じウォンで両替できる日本円の額が増えます。

つまり旅行者の感覚では、日本での買い物や食事が「前回来たときより安くなっている」と感じられるのです。

1,000円のランチが、母国の通貨に換算すると以前より少ない金額で済むとなれば、財布のひもが緩みやすくなるのは自然なことです。

観光庁のデータでも、訪日外国人一人当たりの旅行消費額は近年大きく増加しています。

宿泊費・飲食費・買い物代のいずれも過去最高水準に近い数字が続いており、円安がその背景にある一因として挙げられています。

高級な宿泊施設や高単価の飲食店も、外国人旅行者にとっては「思ったより手が届く値段」と感じられるケースが増えているようです。

大切なのは、この流れが続いているうちに自店舗の受け入れ体制を整えておくことです。

円安による追い風の恩恵を受けられるのは、外国人旅行者が実際に来店できる準備が整っている店舗だけです。

言葉の壁・決済手段・情報発信の3つが整っていなければ、近くまで来てくれた外国人旅行者を取り込めないまま終わってしまいます。

円安の仕組みと外国人旅行者の消費行動への影響を正しく理解することが、自店舗のインバウンド対応を考えるうえでの出発点になります。

為替レートとは何か|まずここだけ押さえておく

「為替レート」「円安」という言葉はニュースで毎日のように登場しますが、自分の店舗とどう関係するのかがピンとこない方も多いと思います。難しく考えず、まず3つのポイントだけ押さえておきましょう。

円安・円高とはどういう意味か

為替レートとは、異なる国のお金を交換するときの「交換比率」のことです。例えば「1ドル=150円」というのは、1ドルのものを買うのに150円が必要だということを意味します。

円安とは、外国のお金と比べて日本円の価値が下がった状態のことです。

わかりやすく言うと「1ドルを手に入れるために、前より多くの円を払わなければならない」という状態です。例えば「1ドル=100円」だったものが「1ドル=150円」になると、円の価値が下がったことになり、これが円安です。

反対に円高とは、外国のお金と比べて日本円の価値が上がった状態のことです。「1ドル=150円」だったものが「1ドル=100円」になると、円の価値が上がったことになります。

外国人旅行者にとって円安はどう感じるか

外国人旅行者にとって、円安は「日本での買い物や食事が安くなった」と感じる状態です。

例えば韓国ウォンで給料をもらっている旅行者が日本に来た場合、円安が進むと同じウォンでより多くの日本円に両替できます。つまり1,000円のランチが、以前より少ないウォンで食べられることになります。

これは外国人旅行者にとって「日本旅行がお得になった」という感覚につながり、日本への旅行意欲が高まる要因になります。

高級旅館・高単価の飲食店・ブランド品のお土産なども「思ったより手が届く値段」に感じられるため、以前なら諦めていた消費にも財布のひもが緩みやすくなります。

今の円安水準はどのくらいか

2022年初め頃は1ドル=114円前後でしたが、その後急速に円安が進み、2024年夏には一時1ドル=161円台という、1986年以来約40年ぶりの歴史的な円安水準をつけました。

2025年には一時的に140円台まで円高が進む場面もありましたが、その後再び円安方向に戻り、2026年7月現在も1ドル=160円台後半の水準で推移しています。

こうした円安を背景に、2025年の年間訪日外国人旅行者数は4,268万人に達し、過去最高を更新しました。

インバウンド消費額は9.5兆円規模に達し、自動車に次ぐ第2位の外貨獲得源としての地位を固めています。円安による割安感が、日本への旅行需要を強力に後押ししている状況が続いています。

なお為替レートは日々変動するため、本記事の数字はあくまでも執筆時点の情報です。最新のレートはニュースや金融機関のウェブサイトでご確認ください。

円安が外国人客の購買行動に与える影響

為替レートの基本を押さえたうえで、円安が外国人旅行者の実際の購買行動にどのような影響を与えているのかを整理します。

日本での買い物・食事・宿泊が「割安」に感じられる

円安が進むと、外国人旅行者が母国の通貨で換算したときの日本での消費額が相対的に安くなります。

例えば2022年頃と比べて現在は円安が大幅に進んでいるため、同じ金額の食事や宿泊でも、旅行者が母国で感じる「実際の出費感」はずいぶん小さくなっています。

この「割安感」は旅行者の消費行動に直接影響します。以前なら「ちょっと高いかな」と思っていた飲食店に入ってみよう、予算オーバーだと思っていた旅館に泊まってみようという判断につながりやすくなります。

観光庁のデータでも、2025年の訪日外国人一人当たりの消費額は22.9万円に達しており、2019年比でも大幅に増加しています。円安による割安感が消費の底上げに寄与していると見られています。

高単価の商品・サービスも売れやすくなる

円安の状況では、普段は手の届きにくい高単価の商品やサービスにも外国人旅行者の手が届きやすくなります。

高級旅館の一泊数万円のプランも、欧米の旅行者からすれば母国での同等クラスのホテルより割安に感じられることがあります。

高級な和牛・希少なお酒・職人が作った工芸品なども、円安効果で外国人旅行者にとって「この機会に買っておこう」という動機が生まれやすくなります。

実際に2025年のインバウンド消費データを見ると、一人あたりの消費単価が特に高いのはドイツやフランスなど欧州からの旅行者で、平均35〜40万円を消費しており、長期滞在で複数都市を周遊しながら高付加価値な体験にお金を使う傾向が見られます。

円安による割安感が、こうした高単価消費をさらに後押ししている面があります。

リピーターが増え、旅行先として選ばれやすくなる

円安が続く状況では、一度日本を訪れた旅行者が「また来たい」と感じやすくなります。

「前回来たときより物価が安くなっている」「もう一度あのお店に行きたい」という動機が生まれやすく、リピーターの増加につながります。

またSNSで「日本旅行がコスパ最高」という口コミが広がることで、まだ日本を訪れたことがない外国人旅行者の来日意欲も高まります。

こうした口コミによる連鎖的な集客効果は、広告費をかけなくても自然に広がる点が特徴です。

2025年の訪日外客数が調査対象23市場のうち20市場で過去最高を記録した背景には、こうした円安による旅行先としての日本の魅力向上が大きく影響していると見られています。

円安を追い風にするために店舗が今すぐできること

円安による外国人旅行者の購買意欲の高まりを、自店舗の売上につなげるためには、受け入れ体制を整えることが前提になります。

追い風が吹いていても、帆が張れていなければ船は進みません。今すぐ取り組める対応を3つ整理します。

価格設定の見直し

円安が続く状況では、外国人旅行者にとって日本での消費は以前より割安に感じられています。つまり、適切な価格設定であれば、以前より高い値段でも外国人旅行者に受け入れられやすい状況になっています。

「外国人客に高い値段をつけると来なくなるのでは」と心配される方もいますが、旅行者の感覚では母国通貨に換算した金額で判断しています。

円安の状況では、日本人客には割高に感じる価格でも、外国人旅行者には母国と同等か割安に映ることがあります。

具体的な見直し方として、外国人旅行者向けのプレミアムメニューや宿泊プランを新設することが考えられます。

英語での説明を添えた高単価メニュー・体験型のセットプラン・記念日向けの特別コースなど、日本人向けの通常メニューとは別に外国人旅行者の購買意欲に合わせた選択肢を設けることが効果的です。

高単価商品・サービスの打ち出し方

外国人旅行者が求めているのは「安いもの」ではなく「日本でしか体験できない価値あるもの」です。円安による割安感は、高品質・高単価の商品やサービスへの購買意欲を後押しする要因になっています。

打ち出し方として効果的なのが、商品やサービスの「物語」を英語で伝えることです。

職人が手作りした一点もの・地元の食材だけを使った料理・数十年続く老舗の味など、日本の文化や歴史を背景に持つ商品は、外国人旅行者にとって「日本でしか買えない特別なもの」として映ります。

値段だけでなく価値を伝えることで、高単価でも納得して購入してもらいやすくなります。

Googleビジネスプロフィールや店舗のSNSに、こうした商品の魅力を英語で発信しておくことも、来店前の旅行者の購買意欲を高める有効な方法です。

外国人客が「お得感」を感じやすい情報の伝え方

外国人旅行者が「お得だ」と感じるためには、比較の基準が必要です。母国での同等サービスの価格と比べて日本がどれだけ割安かを、さりげなく伝えることが購買の後押しになります。

例えば「日本の職人が作った一点もの」「本場の味」「限定品」「地元でしか買えない」といった言葉は、希少性と価値を同時に伝えられます。

英語表記のPOPや多言語メニューにこうした言葉を添えるだけでも、外国人旅行者の購買判断を後押しする効果があります。

またSNSへの投稿を促す工夫も有効です。外国人旅行者がSNSに投稿した写真や動画が拡散されると、次の旅行者への口コミになります。

フォトスポットの整備・映える盛り付け・SNS投稿を促す英語の一言カードなど、コストをかけずにできる工夫から始めてみましょう。

よくある質問

円安と外国人客の購買行動について、よく寄せられる疑問をまとめました。

円安はいつまで続くのですか?

正直なところ、為替レートの今後を正確に予測できる人は専門家でも存在しません。

2026年7月現在、1ドル=160円台後半という水準が続いていますが、今後の見通しについては専門機関によって見方が分かれています。

野村證券の見通しでは2026年末に1ドル=147.50円程度への緩やかな円高を予想する一方、日米の金利差が縮まりにくい構造的な状況から円安圧力が続くという見方もあります。

重要なのは「円安がいつまで続くか」を気にするより、「今この状況を活かせているか」を考えることです。

円安が続いている今のうちに外国人旅行者の受け入れ体制を整えておくことで、円高に転じた後も「日本旅行の良さを知っているリピーター」を確保しやすくなります。

為替レートに関係なく外国人旅行者に選ばれる店舗になるための準備を、今から進めておくことが長期的な安定につながります。

円高になったら外国人客は減りますか?

円高になると、外国人旅行者にとって日本での消費が割高に感じられるため、来日する旅行者の数や一人あたりの消費額が減少する可能性はあります。

ただし円高だけが訪日旅行者数を左右するわけではありません。日本の食文化・自然・安全性・おもてなしなど、為替レートに左右されない魅力を感じて来日する旅行者も多くいます。

実際に円高だった時代でも訪日外国人数は増加傾向にあった時期があり、円安だけが訪日旅行ブームの理由ではありません。

円安の恩恵を受けながら、円高になっても来てもらえる「為替に左右されない魅力」を店舗として育てていくことが、長期的なインバウンド集客の安定につながります。

多言語対応・口コミの充実・独自の体験価値の提供といった取り組みは、円高になっても効き続ける資産になります。

価格を上げても外国人客は気にしませんか?

一概には言えませんが、価格よりも「価値に見合っているか」が外国人旅行者の判断基準になる場合が多いです。

単純に値上げするだけでは「高い」と感じられますが、価格に見合う価値を英語や多言語で正しく伝えることができれば、高単価でも納得して購入してもらえるケースは多いです。

注意したいのは、日本人客と外国人客で価格を変えることです。

国籍による価格差別はトラブルや口コミでの批判につながるリスクがあるため、全ての客に同じ価格を設定しながら、外国人旅行者向けのプレミアムな選択肢を追加するという方向が現実的です。

既存のメニューや商品はそのままに、外国人旅行者の購買意欲に合わせた高単価の選択肢を新たに加える形が、トラブルを避けながらインバウンド消費を取り込む現実的な方法です。

円安はチャンス、ただし準備が整っている店舗だけが恩恵を受ける

ここまで為替レートの基本的な仕組みから、円安が外国人旅行者の購買行動に与える影響、店舗が今すぐできる対応まで解説してきました。最後に全体を振り返ります。

円安は「向こうからやってくるチャンス」ではない

円安が続いているからといって、何もしなくても外国人旅行者が来てくれるわけではありません。

円安による割安感で日本への旅行意欲が高まった旅行者が、Googleマップや口コミサイトで店舗を探し、多言語の情報を確認し、クレジットカードや電子マネーで支払いたいと思ったとき、その一つひとつに対応できている店舗だけが来店につながります。

円安という追い風は、受け入れ体制が整っている店舗にだけ吹いてくるものです。

為替に左右されない店舗の「強さ」を育てる

円安が続く今のうちに外国人旅行者の受け入れ体制を整えておくことで、仮に将来円高に転じたとしても、一度来店して良い体験をした旅行者がリピーターとして戻ってきやすくなります。

口コミサイトへの掲載・SNSでの情報発信・多言語対応・キャッシュレス決済の導入といった取り組みは、為替レートに関係なく積み重なっていく資産です。

円安をきっかけに始めた対応が、円高になっても効き続ける強さになっていきます。

まず「今日来てくれる旅行者のために」できることから始める

為替レートの先行きを心配するより、今日来店してくれる外国人旅行者のために何ができるかを考えることが、インバウンド対応の出発点です。

翻訳デバイスを一台置く・Googleビジネスプロフィールの写真を充実させる・英語のPOPを一枚作る。こうした小さな一歩が積み重なって、外国人旅行者に選ばれる店舗が育っていきます。

円安という好条件が続いている今は、インバウンド対応を始めるタイミングとして非常に恵まれています。この機会に自店舗の受け入れ体制を一つずつ整えていきましょう。

この記事を書いた人

旅行、観光、IT・Webマーケティングの仕事に25年ほど携わってきた40代。現在はインバウンド対応に悩む店舗・宿泊施設の方々に向けて、実際に使えるツールや方法をまとめています。導入コストや使い勝手を含めて丁寧に検証することを心がけています。