決済手数料とは何か|クレジットカード・QRコード・現金それぞれのコスト構造をやさしく解説

「手数料が取られるなら現金の方がいい」と思っていませんか?

クレジットカードや電子マネーで支払いを受けると、売上の一部が手数料として引かれる。それなら現金だけの方が全額手元に残るのでは、と感じている経営者の方は少なくないと思います。

特に利益の薄い飲食店や小規模な小売店では、売上から数パーセントが引かれることへの抵抗感は自然な感覚です。

しかし、この「現金の方が得」という考え方は、実は少し見直してみる必要があります。現金だけで対応している店舗にも、目には見えにくいコストが発生しているからです。

関連する記事 インバウンド対応の予約サイト連携ツール比較|Booking.com・Airbnbと同期できるサービスはどれか

銀行に売上を入金しに行く時間と交通費、レジのお釣り用に毎日用意する小銭の準備、万が一のレジ間違いや釣り銭のミスへの対応。

こうした手間やコストは数字として見えにくいですが、積み重なると決して小さくはありません。

外国人旅行者への対応という観点でも、現金のみの対応にはリスクがあります。訪日外国人の多くは、母国で使い慣れたクレジットカードやスマートフォン決済を使いたいと考えています。

日本円の現金をあまり持ち歩かない旅行者も増えており、「現金しか使えない」という状況が来店をあきらめる理由になることもあります。

会計の場面で外国人のお客様を困らせてしまうと、口コミサイトに「カードが使えなかった」と書かれてしまうリスクもあります。

キャッシュレス決済の導入を躊躇している理由として最も多いのが、「手数料の仕組みがよくわからない」「結局いくらかかるのか不安」という声です。

確かに、クレジットカード・QRコード決済・電子マネーなど種類が多く、それぞれの手数料の仕組みが違うため、わかりにくいと感じるのは当然です。

手数料に対する漠然とした不安を解消するためには、まず仕組みを正しく理解することが大切です。

数字の全体像がつかめれば、自店舗にとって導入する価値があるかどうかを冷静に判断できるようになります。

決済手数料とは何か|お金の流れをやさしく説明する

クレジットカードやQRコード決済を店舗で使えるようにするには、決済サービスの会社と契約する必要があります。

その際に発生するのが「決済手数料」です。仕組みを順番に整理します。

売上から引かれる「手数料」の仕組み

例えば、1,000円の食事をクレジットカードで支払ってもらった場合、1,000円がそのまま店舗の口座に入金されるわけではありません。

決済サービスの会社が間に入り、手数料を差し引いた金額が後日まとめて振り込まれます。手数料率が3%の場合、1,000円の売上から30円が引かれ、970円が店舗に入金される仕組みです。

お客様が支払う金額は1,000円のまま変わらず、手数料はお客様ではなく店舗側が負担します。

つまり手数料とは、「カードやQRコードで決済できる仕組みを使わせてもらう対価」として、売上の一部を決済サービスの会社に支払うものと考えるとわかりやすいです。

手数料は誰に払っているのか

クレジットカード決済の場合、お金の流れには複数の会社が関わっています。

まずカードを発行した会社(例:VISAやMastercard)、次に店舗と契約して決済の仕組みを提供する会社(決済代行会社)、そして実際に店舗に端末を提供している会社の3者が関わっています。

手数料はこれらの会社それぞれの取り分がまとまったもので、店舗は決済代行会社に一括で支払う仕組みになっています。

QRコード決済(AlipayやPayPayなど)の場合は、カードほど複雑な構造ではなく、基本的にQRコード決済を運営している会社に手数料を支払う形になります。

そのためクレジットカードよりも手数料率が低めに設定されている場合が多いです。

手数料率はどのくらいが目安か

手数料率はサービスや業種によって異なりますが、目安として以下のように整理できます。クレジットカード決済は一般的に売上の2〜3.5%程度が手数料率の目安です。

QRコード決済は0〜2%程度が多く、期間限定で手数料無料のサービスもあります。ただし無料期間が終了すると有料になるケースもあるため、契約前に長期的な手数料率を確認しておくことが大切です。

これらはあくまでも目安であり、実際の手数料率は契約する決済サービスの会社・業種・月間売上の規模などによって変わります。複数のサービスを比較してから契約することをお勧めします。

クレジットカード・QRコード・現金のコストを比べてみる

「現金なら手数料がかからない」と思われがちですが、実際にはそれぞれに異なるコストが発生しています。3つの決済方法を同じ目線で比べてみます。

クレジットカード決済にかかるコスト

クレジットカード決済を導入する際にかかるコストは大きく3つあります。

一つ目は決済端末の費用です。カードを読み取る専用の機械が必要になりますが、SquareやAirペイなどのサービスでは端末を無料または安価で提供しているところもあります。

二つ目は月額の利用料です。サービスによっては月額固定料金がかかるものがありますが、月額無料で決済手数料だけかかるサービスも多くあります。

三つ目が売上に対してかかる決済手数料で、先ほど説明した通り2〜3.5%程度が目安です。

入金のタイミングについても確認が必要です。クレジットカードの売上は即日ではなく、数日から数週間後にまとめて振り込まれることが多いため、資金の流れ(いつお金が入ってくるか)に影響します。

サービスによって入金サイクルが異なるため、事前に確認しておきましょう。

QRコード決済にかかるコスト

QRコード決済はスマートフォンの画面に表示されたQRコードを読み取るだけで決済が完了するため、専用端末が不要なケースが多いです。

店舗側は専用のQRコードを印刷して置いておくだけで済む場合もあり、導入の初期費用が比較的低い点が特徴です。

手数料率はクレジットカードより低めの0〜2%程度が多く、一部のサービスでは期間限定で手数料無料のキャンペーンを実施しています。

ただし無料期間終了後の手数料率をあらかじめ確認しておかないと、想定外のコストが発生することがあります。

外国人旅行者向けにはAlipayやWeChat Payなど中国発のQRコード決済への対応が特に重要で、これらはクレジットカードとは別に契約が必要になることがほとんどです。

現金にかかるコスト(実は意外とかかっている)

現金は手数料がかからないように見えますが、実際には目に見えにくいコストが発生しています。

まず両替の手間とコストです。お釣り用の小銭を毎日用意するために銀行や郵便局に行く時間、両替手数料、交通費がかかります。

次に売上の入金コストです。現金を銀行口座に入金する際にも、銀行によっては窓口入金の手数料がかかる場合があります。

また現金は盗難や紛失のリスクがある点も見逃せません。

万が一レジの中身が合わなかった場合の確認作業、スタッフの不正防止のための管理体制なども、目に見えにくいコストの一つです。

現金のやり取りで生じるミスへの対応時間も積み重なると大きな負担になります。

外国人旅行者への対応という観点では、現金のみの対応は来店機会の損失につながりうるという「機会コスト」も考慮する必要があります。

「カードが使えなかったので別の店に行った」という状況は、売上として計上されないため見えにくいですが、確実に存在するコストです。

外国人観光客への対応という観点で考える

決済手数料の仕組みと各決済方法のコスト構造を理解したうえで、外国人旅行者への対応という観点から、導入の判断基準を整理します。

外国人観光客が使いたい決済手段

訪日外国人が日本で支払いに困る最大の理由の一つが、自分の国で使い慣れた決済手段が使えないことです。

国籍によって使いたい決済手段は異なりますが、大きく3つのグループに分けて考えることができます。

韓国・台湾・欧米・オセアニアからの旅行者はVISA・Mastercard・American Expressなどの国際的なクレジットカードを持ち歩いている場合がほとんどです。

これらに対応しているだけで、多くの外国人旅行者の会計をスムーズに処理できます。

中国本土からの旅行者はAlipayやWeChat Payなどのスマートフォン決済を使うことが多く、日本円の現金をほとんど持ち歩かないケースも増えています。

クレジットカード対応だけでなく、QRコード決済への対応も合わせて検討することをお勧めします。

東南アジアからの旅行者はGrabPayやTrueMoney Walletなど各国独自の決済手段を使う場合もありますが、多くはVISAやMastercardにも対応しているため、まず国際ブランドのクレジットカードへの対応から始めることが現実的です。

手数料を払っても導入する価値があるケース

外国人旅行者が多い立地や業種では、キャッシュレス決済への対応によって得られる売上の増加が、手数料のコストを上回る場合が多いです。

具体的には、外国人旅行者が「現金がない」「カードが使えない」という理由で来店をあきらめてしまう機会損失を防げること、外国人旅行者は日本人客と比べて客単価が高い傾向があるため、一件あたりの手数料コストよりも売上へのプラス効果が大きくなりやすいこと、口コミサイトでの評判低下を防げることの3点が主な理由です。

例えば一日に外国人のお客様が5人来店し、そのうち2人が「現金しか使えない」という理由で来店をあきらめていたとすると、その機会損失は手数料コストよりもはるかに大きい可能性があります。

手数料を「取られるコスト」と捉えるのではなく、「外国人客に来てもらうための投資」と考え直してみると、判断が変わるケースは少なくありません。

まず何から導入すれば良いか

すべての決済手段に一度に対応しようとすると、契約・設定・スタッフへの説明など手間が一気に増えてしまいます。

まずVISA・Mastercardなどの国際ブランドに対応したクレジットカード決済から始め、自店舗の外国人客の国籍傾向を確認しながらAlipay・WeChat Payなどのスマートフォン決済を追加していく進め方が現実的です。

SquareやAirペイのように、複数の決済手段をまとめて一つの端末で対応できるサービスを選ぶと、契約先が一本化できて管理がシンプルになります。

まず一台導入して使い勝手を確認してから、必要に応じて追加する方法が、失敗のリスクを抑えながら進める現実的な方法です。

よくある質問

決済手数料について、よく寄せられる疑問をまとめました。

手数料はお客様側に上乗せして請求できますか?

結論から言うと、原則としてできません。

クレジットカードの国際的なルールでは、カードで支払うお客様に対して現金払いより高い金額を請求する「サーチャージ(上乗せ請求)」は原則禁止されています。

カード会社との契約でもこのルールが定められていることがほとんどで、違反するとカード決済の契約を解除される可能性があります。

ただし、現金払いに対して値引き(現金割引)を行うことは認められているケースがあります。例えば「現金払いの方は5%引き」という形であれば、サーチャージとは異なる扱いになります。

ただしこちらも契約内容によって異なるため、導入しているサービス会社に事前に確認しておくことをお勧めします。

基本的には手数料は店舗側が負担するものと割り切って、価格設定の中に組み込む形で考えることが現実的です。

売上が少ない月でも手数料はかかりますか?

決済手数料は売上に対して一定の割合でかかる仕組みのため、売上がゼロであれば手数料もゼロです。

ただし月額の利用料が別途かかるサービスの場合は、売上に関係なく毎月固定の費用が発生します。

売上が少ない月が続くような小規模店舗や、シーズンによって売上の波が大きい店舗では、月額固定料金のないサービスを選ぶ方がコストを抑えやすいです。

SquareやAirペイなど、月額料金なしで決済手数料だけかかるサービスを選ぶと、売上が少ない時期の固定コストを抑えながら運用できます。

導入前に月額料金の有無と決済手数料率の両方を確認してから比較することが大切です。

手数料が安い決済サービスはどれですか?

手数料率だけで単純に比較することは難しく、業種・月間売上・使いたい決済ブランドの種類によって最適なサービスが変わります。

一般的な目安として、QRコード決済はクレジットカード決済より手数料率が低めに設定されているケースが多いです。

クレジットカード決済の中では、Squareが一律3.25〜3.75%程度、Airペイが一律3.24%程度となっており、中小店舗にとって導入しやすい価格帯のサービスが増えています。

ただし手数料率だけでなく、端末費用・月額料金・入金サイクル・サポート体制なども含めたトータルコストで比較することが大切です。

複数のサービスの見積もりを取り、自店舗の状況に合ったものを選ぶようにしましょう。なお具体的な手数料率は変更される場合があるため、各社の公式サイトで最新情報を確認してください。

手数料は「コスト」ではなく「投資」と考えてみる

ここまで決済手数料の仕組みから各決済方法のコスト比較、外国人旅行者への対応という観点まで解説してきました。最後に全体を振り返ります。

「現金が一番お得」は必ずしも正しくない

現金のみの対応は手数料がかからない代わりに、両替の手間・入金コスト・盗難リスク・スタッフの管理負担といった目に見えにくいコストが発生しています。

さらに外国人旅行者が「カードが使えない」という理由で来店をあきらめてしまう機会損失も、確実に存在するコストです。

現金がお得かどうかは、こうした見えにくいコストも含めて考える必要があります。決済手数料という数字だけを見て判断するのではなく、全体のコストと得られる効果を合わせて考えることが大切です。

手数料は「外国人客を迎える準備への投資」

訪日外国人の多くは、母国で使い慣れたクレジットカードやスマートフォン決済で支払いたいと考えています。

キャッシュレス決済への対応は、外国人旅行者にとって来店のハードルを下げる効果があります。

売上の2〜3%の手数料を「取られるコスト」と捉えるのではなく、「外国人客に気持ちよく会計してもらうための準備への投資」と考え直すことで、導入への一歩が踏み出しやすくなります。

まずVISA・Mastercardへの対応から始めよう

すべての決済手段に一度に対応しようとすると、手間もコストも一気に増えてしまいます。

まず国際ブランドのクレジットカード(VISA・Mastercard)への対応から始め、自店舗に来る外国人客の国籍傾向を確認しながら、AlipayやWeChat Payなどのスマートフォン決済を追加していく進め方が現実的です。

月額料金なしで決済手数料だけかかるサービスから始めれば、売上が少ない時期のリスクも抑えながら導入できます。

キャッシュレス決済への対応は、外国人旅行者への「いらっしゃいませ」の気持ちを形にする一つの手段です。

手数料の仕組みを正しく理解したうえで、自店舗に合ったサービスを選んで一歩踏み出してみてください。

この記事を書いた人

旅行、観光、IT・Webマーケティングの仕事に25年ほど携わってきた40代。現在はインバウンド対応に悩む店舗・宿泊施設の方々に向けて、実際に使えるツールや方法をまとめています。導入コストや使い勝手を含めて丁寧に検証することを心がけています。