どの言語から対応すればいいのか、迷っていませんか?
外国人のお客様が増えてきた。何か対応しなければと思いつつ、英語のメニューを作るべきか、中国語の案内板を用意するべきか、韓国語にも対応した方がいいのか。
いろいろ考えているうちに、結局何も手をつけられていない。そんな状況に心当たりはありませんか。
多言語対応を始めようとすると、「すべての言語に対応しなければならない」というプレッシャーを感じてしまいがちです。
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しかし現実には、すべての言語に同時に対応することは、小規模な店舗にとってコスト的にも労力的にも現実的ではありません。
大切なのは、自分の店舗にどの国のお客様が多いかを把握したうえで、優先すべき言語を絞ることです。
実際に訪日外国人の国籍別データを見ると、来日する外国人の国籍には偏りがあることがわかります。
特定の国・地域からの旅行者が全体の大半を占めており、その傾向は地域や業種によっても異なります。
例えば、観光地に近い宿泊施設と、都市部のオフィス街にある飲食店とでは、来店する外国人客の国籍構成がまったく異なることがあります。
全員に対応しようとするのではなく、自店舗に来る可能性が高い国・地域の言語を優先的に整備することが、限られた予算と時間を有効に使うための基本的な考え方です。
また、言語対応の優先順位を決めるうえで、「使われる場面」を意識することも重要です。
メニューや看板などの書き言葉として使うのか、接客時の会話として使うのかによって、対応の方法や必要なツールも変わってきます。
書き言葉であれば機械翻訳でも一定の品質が保てる場合がありますが、接客での会話には翻訳デバイスや研修が必要になることもあります。
どの言語から始めるべきかという問いに対する答えは、店舗の立地・業種・客層によって変わります。
一般的な傾向をデータで把握しながら、自店舗の状況と照らし合わせて考えることが、無駄のない多言語対応への近道です。
訪日外国人の国籍別動向|どの国から何人来ているのか
多言語対応の言語を選ぶ際に、まず把握しておきたいのが訪日外国人の国籍別の傾向です。
感覚ではなくデータを根拠にすることで、限られた予算と時間を最も効果的に使える言語選定が可能になります。
なお、データはJNTO(日本政府観光局)および観光庁の公表統計に基づいています(2026年6月時点)。
アジア圏からの訪日客が全体の大半を占める
2026年4月の訪日外客数は約369万人で、国・地域別にみると韓国が約88万人、台湾が約64万人、中国が約33万人という順になっています。
アジア圏からの旅行者が訪日外客全体の大半を占めており、韓国・台湾・中国・香港・タイ・シンガポールなど東アジア・東南アジアからの旅行者が中心です。
2025年の年間訪日外客数は約4,268万人に達しており、コロナ禍前を大幅に上回る水準で推移しています。
この数字からも、インバウンド対応を整える重要性が高まっていることがわかります。
言語という観点でこれらを整理すると、韓国からの旅行者には韓国語、台湾・香港からの旅行者には中国語(繁体字)、中国本土からの旅行者には中国語(簡体字)が対応言語として必要になります。
アジア圏だけで訪日外客の大半をカバーできることを考えると、まずこれらの言語を優先的に整備することが合理的な判断といえます。
欧米・オセアニアからの訪日客も増加傾向
2026年1〜3月期の米国からの訪日外国人旅行消費額は前年同期比16.6%増と全体の伸び率を大きく上回る堅調な増加となっており、宿泊費だけで2期連続1,000億円を超える高い水準を維持しています。
欧米・オセアニアからの旅行者は人数の面ではアジア圏に及びませんが、一人当たりの消費額が高い傾向があります。
こうした旅行者とのコミュニケーション手段として英語は非常に有効です。
英語は欧米だけでなく、東南アジアや南アジアなど多くの国で共通語として使われているため、幅広い国籍の旅行者に対して一定の意思疎通が図れる点でも、優先言語として位置づけやすい言語です。
地域によって客層は大きく異なる
全国平均のデータはあくまで参考値であり、店舗や施設の立地によって実際の客層は大きく異なります。
例えば、温泉地や旅館が集まるエリアは台湾・香港からの旅行者が多い傾向があり、都市部のショッピングエリアは韓国からの若い世代が多い傾向があります。
スキーリゾートやアウトドアスポットが近いエリアは欧米・オセアニアからの旅行者の比率が高くなることもあります。
自店舗の客層を把握する方法としては、来店した外国人客にレシートや名刺を見せてもらう・Googleビジネスプロフィールのインサイト機能でどの国からのアクセスが多いかを確認する・近隣の観光施設や地域の観光協会に相談するといった手段があります。
優先すべき言語の考え方|4言語を押さえれば大半をカバーできる
訪日外国人全体のデータを踏まえると、まず対応を検討すべき言語は4つに絞られます。
すべてを同時に整える必要はありませんが、この4言語を段階的に整備することで、日本を訪れる外国人旅行者の大半をカバーできます。
中国語(簡体字・繁体字)
中国語には、中国本土で使われる「簡体字」と、台湾・香港・マカオで使われる「繁体字」の2種類があります。
文字の形が異なるため、できれば両方に対応することが理想ですが、どちらか一方から始める場合は、自店舗の客層に合わせて選ぶことをお勧めします。
訪日外客数では台湾が中国本土を上回る月も増えており、2026年1〜3月期の台湾からの訪日外国人旅行消費額は3,884億円で全体に占める構成比は16.6%となり、国籍・地域別トップとなりました。
台湾からの訪日客の消費拡大が顕著で、宿泊費・買物代ともに過去最高を記録しています。観光地や宿泊施設では繁体字対応が特に効果的です。
中国語は一つの言語でアジア圏の多くの旅行者をカバーできる点で、費用対効果が高い言語です。メニューや看板への表記追加から始めると、比較的低コストで対応できます。
韓国語
2026年1〜3月期の韓国からの訪日外国人旅行消費額は3,182億円(前年同期比12.7%増)で、第1四半期だけで300万人を突破しており、宿泊費が初めて1,000億円を超え過去最高を記録しています。
韓国からの旅行者は訪日外客数の中で常に上位を占めており、リピーターが多い点も特徴です。
日本のポップカルチャーへの関心が高い若い世代を中心に、SNSでの情報収集・発信が活発なため、韓国語での案内板やメニューを用意しておくと口コミ効果も期待できます。
地理的に近く、比較的短期間の旅行が多いため、飲食店・小売店・観光施設など幅広い業種での需要があります。
英語
英語は特定の国向けというより、国際的な共通語として位置づけることが重要です。
アメリカ・イギリス・オーストラリアなど英語圏の旅行者だけでなく、東南アジア・南アジア・中東など、英語を第二言語として使う旅行者との意思疎通にも役立ちます。
消費額という観点では、米国からの旅行者は一人当たりの旅行消費額が高く、宿泊費が2期連続で1,000億円を超える高い水準を維持しています。
人数は少なくても、一人当たりの消費額が高い旅行者層への対応として、英語は欠かせない言語です。
また英語は翻訳ツールやAIとの相性が最も良い言語のため、機械翻訳の精度が比較的安定しており、コストを抑えながら対応できる言語でもあります。
タイ語・その他アジア言語
タイ・シンガポール・マレーシア・インドネシアなど東南アジアからの訪日旅行者は近年増加傾向にあります。
これらの国の旅行者はSNSでの情報収集が活発で、観光スポットや飲食店を細かく調べてから来日するケースが多く、現地語での情報発信が集客に直結することもあります。
ただし、東南アジア各国の言語は多様なため、すべてに個別対応するのは現実的ではありません。
英語での対応を基本としながら、自店舗の近くに東南アジア系の旅行者が多いエリアがある場合に、タイ語などを追加で検討する形が現実的です。
自店舗の客層に合わせた言語の絞り方
全国的なデータを把握したうえで、次に重要なのは自店舗の実際の客層に照らし合わせて優先言語を絞ることです。
同じ日本国内でも、立地・業種・観光との距離感によって来店する外国人客の国籍構成は大きく変わります。
立地で考える
観光地や世界遺産の近く、温泉地や旅館が集まるエリアでは、台湾・香港・中国・韓国からの旅行者が多い傾向があります。繁体字と韓国語を優先的に整備するのが効果的です。
都市部の繁華街やショッピングエリアでは、韓国・中国からの若い世代が多い傾向があります。韓国語と中国語(簡体字・繁体字)を優先しながら英語も整えると、幅広い客層に対応できます。
スキーリゾートやアウトドアスポット、サイクリングルートの近くでは、欧米・オセアニアからの旅行者の比率が高くなる傾向があります。英語対応を最優先にしながら、中国語・韓国語を追加していく順番が現実的です。
地方の農村・山岳エリアや、SNSで話題になった絶景スポットの近くでは、アジア圏・欧米圏を問わず多様な国籍の旅行者が訪れるため、英語を共通語として優先しつつ、口コミの分析で客層が明確になってから言語を追加するという進め方が合理的です。
業種で考える
飲食店は、料理の種類によっても客層が変わります。ラーメン・寿司・焼肉など日本を代表するジャンルは韓国・台湾・中国からの旅行者に人気が高く、これらの言語を優先しやすいです。
精進料理やヴィーガン対応の飲食店は欧米系の旅行者との相性が良く、英語対応が特に重要になります。
小売店・土産物店は、購買力という観点から台湾・韓国・欧米からの旅行者を意識した言語対応が効果的です。
宿泊施設は滞在時間が長い分、チェックイン案内・施設利用ルール・周辺観光情報など、多様な場面での多言語対応が必要になります。
まず英語と中国語(繁体字・簡体字)・韓国語の3言語から始めると、大半の場面をカバーできます。
客層を把握する具体的な方法
自店舗の外国人客の国籍傾向を把握するためには、いくつかの方法が有効です。Googleビジネスプロフィールのインサイト機能では、どの国からの検索・アクセスが多いかを確認できます。
Tripadvisorなどの口コミサイトに投稿された口コミの言語を確認するだけでも、おおよその客層の傾向がつかめます。
近隣の観光協会や商工会に相談すると、地域全体の訪日外客の国籍動向を教えてもらえることもあります。
これらの情報を組み合わせて、自店舗の実情に合わせた言語選定を行うことが、コストと効果のバランスが取れた多言語対応への近道です。
よくある質問
多言語対応の言語選定について、よく寄せられる疑問をまとめました。
英語だけ対応すれば十分ですか?
英語だけで対応できる場面は確かにあります。特に欧米・オセアニア・東南アジアからの旅行者との意思疎通には英語が有効です。
しかし訪日外客数の上位を占める韓国・台湾・中国からの旅行者の多くは、英語よりも母国語での情報を好む傾向があります。
例えば、メニューや看板が英語だけだと、中国語・韓国語話者には内容が伝わりにくい場面が出てきます。
翻訳デバイスを使った口頭での会話は英語で対応できても、書き言葉としての案内は母国語に近い方が読みやすく、来店のハードルを下げる効果があります。
英語対応を基本としながら、客層に合わせて中国語・韓国語を追加していく進め方が現実的です。
簡体字と繁体字は別々に対応する必要がありますか?
厳密には別々に対応することが望ましいですが、必ずしも最初から両方揃える必要はありません。簡体字と繁体字は文字の形が異なるものの、基本的な単語や文章の意味は共通している部分も多く、繁体字表記でも中国本土の旅行者にある程度内容が伝わるケースがあります。
ただし、より丁寧な対応を目指すなら、中国本土向けには簡体字、台湾・香港向けには繁体字を使い分けることをお勧めします。翻訳ツールやアプリを使えば、それほど大きなコスト増加なく両方の表記を用意できるため、余裕があれば最初から両方対応しておく方が長期的には効率的です。
対応言語は増やせば増やすほど良いですか?
必ずしもそうとは限りません。対応言語を増やすほど、翻訳の品質管理・更新の手間・コストが増えていきます。
中途半端な品質の多言語対応は、かえって誤解やトラブルを招くリスクがあります。
大切なのは、対応する言語を絞って、その言語での品質を高く保つことです。
まず2〜3言語に絞って丁寧に対応し、自店舗の客層の変化や運営に余裕が出てきた段階で追加言語を検討するという段階的なアプローチが、品質とコストのバランスを保ちながら進める現実的な方法です。
まず2言語から始めて客層に合わせて広げていく
ここまで訪日外国人の国籍別動向から優先すべき言語の考え方、自店舗の客層に合わせた絞り方まで解説してきました。最後に全体を振り返りながら、実際の進め方を整理します。
データを根拠に、感覚ではなく客層で判断する
多言語対応の言語選定でよくある失敗の一つが、「なんとなく英語から始めた」というケースです。
英語対応は確かに幅広い旅行者に対して有効ですが、自店舗に来る外国人客の大半が韓国・台湾からの旅行者であれば、英語より韓国語・中国語(繁体字)を優先した方が費用対効果は高くなります。
JNTOや観光庁が公開している統計データ、Googleビジネスプロフィールのインサイト機能、口コミサイトの投稿言語など、手に入れやすい情報を活用して、感覚ではなくデータを根拠に言語を選ぶことが大切です。
まず2言語から始めることが現実的
すべての言語に対応しようとすると、コストと手間が膨らみ、かえってどれも中途半端になるリスクがあります。
最初は自店舗の客層に最も近い2言語に絞り、メニューや看板など最低限必要な書き言葉の対応から始めることをお勧めします。
例えば観光地近くの飲食店であれば、まず繁体字と韓国語から始め、口コミや来店傾向を見ながら英語や簡体字を追加していくという進め方が現実的です。
言語対応は「育てるもの」という意識を持つ
多言語対応は、一度整えて終わりではありません。外国人客の国籍動向は円相場・航空路線・観光トレンドなどによって変化します。
半年から1年に一度、Googleビジネスプロフィールのインサイトや口コミサイトの投稿言語を確認しながら、対応言語の優先順位を見直す習慣を持つことが、長期的に効果的な多言語対応につながります。
多言語対応に完璧な状態はありません。まず自店舗の客層に合った2言語から始め、運営しながら少しずつ対応の幅を広げていく姿勢が、限られたリソースの中で最も無駄のない進め方です。


