華やかな観光PRの裏で、埼玉県が抱える2つの現実
埼玉県には、他の都道府県にはない、ちょっと変わった悩みがあります。それは「ダサイタマ」という、あまりありがたくない呼び名です。
観光地が少ない、これといった特徴がない。そんな声が、他県の人々からしばしば投げかけられてきました。
実際にインターネット上の掲示板をのぞいてみると、川越や秩父はあるけれど、どちらも東京からの近さがあってこそ成立している観光地で、古い町並みの美しさなら岐阜県の飛騨高山の方が上、雄大な自然を楽しみたいなら長野県や山梨県の方が満足できるという、手厳しい比較の声が並んでいます。
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テレビの街歩き番組で紹介された川越の町並みを実際に見に行ったところ、想像していたよりも規模が小さく、三重県の伊勢のような賑わいを期待していた分、拍子抜けしてしまったという感想も見られました。
その一方で、こうした自虐的な評判を、埼玉県民自身が心から受け入れているわけではありません。
地元の人が自分の県をダサいと言うのは構わないが、他県の人に言われると素直に受け止められないという、複雑な地元への想いも語られています。
生まれ育った土地を軽く扱われることへの、静かな反発がそこにはあります。
そしてもう1つ、埼玉県は、まったく正反対の課題にも直面しています。それが、川越の一番街で起きているオーバーツーリズムです。
蔵造りの町並みを目当てに、国内外から多くの観光客が押し寄せるようになった結果、車道にまではみ出してしまう歩行者の列や、慢性的な交通渋滞、そして食べ歩きのあとに捨てられていくゴミの問題が、深刻さを増しています。
川越市はこの状況を受けて、一番街を終日北から南への一方通行に変更し、春と秋の休日には歩行者天国を導入するといった、具体的な対策に乗り出しました。
2025年、川越市を訪れた観光客数はおよそ716万人と、前の年よりも19万8000人減少しましたが、そのうち外国人観光客数はおよそ80万6000人と、2007年の調査開始以来、最も多い数字を記録しています。
日本人観光客が減る一方で、外国人観光客だけが増え続けているのです。
「観光地としての規模が小さすぎる」という失望の声と「一部のエリアに観光客が集中しすぎている」という悲鳴。
一見すると正反対に見えるこの2つの現実は、実は同じ根っこから生まれています。埼玉県の魅力が、川越や秩父といった、ごく一部の場所にしか知られていないということです。
まだ知られていない魅力を、いかにして丁寧に掘り起こし、川越だけに偏らない形で発信していけるか。埼玉県のインバウンド戦略は、まさにこの一点にかかっていると言っても過言ではありません。
埼玉県ってどんなところ?基本情報とインバウンドから見た魅力
埼玉県と聞いて、何を思い浮かべますか。小江戸と呼ばれる川越の蔵造りの町並み、秩父の雄大な自然、そしてアニメの聖地としても知られる、静かな住宅街。
関東地方の中央部に位置するこの県には、東京のすぐ隣にありながら、まだあまり知られていない魅力がたくさん眠っています。
県庁所在地はさいたま市で、旧国名では、県のほぼ全域が武蔵国に含まれていました。かつては東京都や神奈川県よりも、この武蔵国の中心地としての役割を担っていたという歴史も持っています。
埼玉県は、東京駅や新宿駅から電車でわずか30分から1時間ほどでアクセスできる、首都圏近郊の内陸県です。
都心のベッドタウンとしての一面を持ちながら、秩父地方には長瀞や三峯神社といった雄大な自然が広がり、川越には江戸時代からの歴史情緒が今も色濃く残っています。
人口は全国5位という多さを誇りながら、待機児童数の少なさや公園面積の広さでは全国トップクラスという、暮らしやすさの面でも高い評価を受けている県です。
数字を見ると、埼玉県のインバウンドには、少し複雑な現実があります。
財務省関東財務局の調査によれば、訪日外国人の都道府県別訪問率を見ると、埼玉県はわずか0.3%にとどまっており、東京都や神奈川県、千葉県がそれぞれ5%前後という水準にあるのと比べて、極端に少ないという結果が出ています。
一方で、2019年の観光入込客数で見ると、埼玉県は集計可能な32県のうち4位という上位に位置しています。
つまり、国内観光客からは一定の人気を集めているものの、その魅力が海外にはまだ十分に伝わっていないというのが、埼玉県が抱える正直な実情です。
外国人観光客の国籍別に見ると、中国、台湾、韓国といったアジアの国と地域からのお客さまが中心です。
東京から近く、古き良き日本文化を満喫できる街並みと、アニメの聖地を数多く持つという特徴は、アジア圏を中心に一定の人気を集める要素になっています。
「Just North of Tokyo」というキャッチフレーズを掲げ、都内に滞在する外国人観光客に向けたプロモーションを強化するなど、埼玉県も誘客促進の取り組みを本格化させています。
まだ知られざる魅力にあふれた埼玉県だからこそ、これからどう世界に発信していくかが、大きな鍵になります。
埼玉県を代表する自然と景勝地
長瀞(ライン下り) ながとろ
長瀞は、秩父地域を流れる荒川沿いに広がる、国の名勝及び天然記念物に指定された渓谷です。
「瀞」とは川の深くて流れが緩やかな場所を指し、それが長く続くことから「長瀞」と呼ばれるようになりました。
その代表格が、約500メートルにわたって広がる「岩畳」です。結晶片岩でできた一枚岩の岩盤は、地球の内部の様子を知る手がかりになることから「地球の窓」とも呼ばれる、地質学的にも大変貴重な場所です。
この岩畳の中を進む「荒川ライン下り」は、長瀞観光のハイライトです。
船頭さんの巧みな竿さばきと、個性豊かなガイドを聞きながら、瀬と淵で表情を変える荒川を、ときにゆったりと、ときにスリリングに下っていきます。
春は桜、夏は涼風、秋は渓谷を彩る紅葉、冬はこたつ舟で温かく、四季それぞれにまったく違う自然美を楽しめます。
迫力ある断崖「秩父赤壁」など、変化に富んだ渓谷美と、川のせせらぎを間近に感じられる、埼玉県が誇る自然の名所です。

川越市(小江戸) かわごえし
川越市は「小江戸」と呼ばれる、江戸情緒を今に伝える城下町です。実は、川越は江戸よりも歴史が古いという、あまり知られていない事実があります。
室町時代末期、江戸がまだ寂しい未開の地だったころ、川越はすでに太田道真・道灌父子によって川越城が築かれ、栄えていました。
後に道灌が江戸城を築いたことで、川越の文化が江戸へと伝わっていったとも言われ、川越は「江戸の先輩」と呼ぶにふさわしい街なのです。
江戸時代には、江戸まで運河が通じ、農産物を供給するとともに、幕府の文化が直接流れこんでくる立地にあったことから、独自の粋な文化が育まれました。
1893年の川越大火のあと再建された、重厚な蔵造りの商家が立ち並ぶ町並みは、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、今も約400メートルにわたって続いています。
菓子屋横丁の昭和レトロな雰囲気や、シンボルである時の鐘、そして年間400万人が訪れるという賑わいは、東京からわずか30分というアクセスの良さとあいまって、埼玉県随一の観光地としての地位を築いています。
喜多院(川越大師) きたいん
喜多院は「川越大師」の別名で親しまれる、830年に創建されたと伝わる、1200年近い歴史を持つ天台宗の名刹です。
慈覚大師円仁によって開かれ、当初は無量寿寺の中の「北院」という位置づけでしたが、江戸時代初期、徳川家康から厚い信頼を受けた天海僧正が第27世住職となったことで、寺号を「喜多院」と改め、大いに栄えました。
1638年の川越大火で建物の多くが焼失しましたが、3代将軍徳川家光の庇護のもと、江戸城紅葉山の御殿が移築され、再建されました。
このため、喜多院の客殿には、徳川家光が生まれた部屋とされる「家光誕生の間」や、乳母であった春日局が使った「春日局化粧の間」が今も残されています。
境内に並ぶおよそ540体の五百羅漢は、日本三大羅漢の1つに数えられ、喜怒哀楽豊かなその表情の1つ1つに、思わず見入ってしまいます。
徳川家とのゆかりの深さと、江戸城から移された貴重な建物が同居する、埼玉県を代表する寺院です。

祭りの秩父夜祭(秩父市・12月) ちちぶよまつり
秩父夜祭は、秩父の総社である秩父神社の例大祭で、京都の祇園祭、飛騨の高山祭とともに「日本三大曳山祭」に数えられる、日本屈指の豪華な祭りです。
江戸時代の寛文年間にはすでに祭りが存在していたという記録が残り、350年以上の歴史を誇ります。もともとは、秩父神社に立った絹織物の市とともに発展してきたことから「お蚕祭り」とも呼ばれてきました。
毎年12月2日の宵宮と3日の大祭で、2台の笠鉾と4台の屋台が、街中を曳き回されます。
釘を1本も使わずに組み立てられ、金色の飾りや極彩色の彫刻、金糸の刺繍で彩られたその姿は「動く陽明門」と称されるほどの豪華絢爛さです。
クライマックスは3日の夜、最大20トンにもおよぶ山車が「団子坂」と呼ばれる急坂を曳き上げられる瞬間で、その迫力に、見る人すべてが息をのみます。
提灯に照らされた山車と、4500発を超える冬花火が夜空を彩る競演は、まさに幻想的のひと言に尽きます。2016年には、ユネスコ無形文化遺産にも登録された、埼玉県が世界に誇る伝統行事です。
オススメの食べ物
埼玉県の食べ物といえば、まず外せないのが川越名物のさつまいもです。
江戸時代から「川越いも」として名を馳せ、ホクホクとした甘みの強い焼き芋は、食べ歩きの定番。
芋を使ったお菓子も豊富で、大学いもや芋けんぴ、スイートポテトなど、菓子屋横丁を歩くだけで、さつまいもの奥深さを存分に味わえます。
うどん好きなら、埼玉県は隠れた名産地です。武蔵野うどんは、コシの強い太麺と、肉汁と呼ばれる甘辛いつけ汁で食べる、素朴ながらも力強い一杯。
地元で「ダウ」と呼ばれ親しまれている山田うどんも、埼玉県民のソウルフードとして根強い人気を誇ります。もつ煮がついたセットは、量も満足感も抜群です。
秩父地方に行くなら、わらじかつ丼を味わってほしいです。

大きな豚カツが、まるでわらじのように丼からはみ出す、見た目のインパクトも満点の一品。醤油だれがしみこんだサクサクの衣と、ジューシーな豚肉の相性は格別です。
同じ秩父の郷土料理である豚みそ丼も、味噌の香ばしさが食欲をそそります。
深谷ねぎも、埼玉県が全国に誇る特産品です。加熱するととろけるような甘さに変わり、鍋物や焼きねぎで、その実力を存分に発揮します。
草加せんべいも忘れてはいけません。パリッとした歯ごたえと、醤油の香ばしさが際立つ、江戸時代から続く伝統の味です。
埼玉県は、粉もの文化も、芋の甘みも、そして地元に根づいたご当地グルメも、すべてが力強く息づいた、食の宝庫だと言えます。
埼玉県を訪れる外国人観光客の国籍・傾向
埼玉県を訪れる外国人観光客の数字を見ると、他の都道府県とは少し違う、独特の構造が見えてきます。
財務省関東財務局の調査によれば、訪日外国人の都道府県別訪問率で、埼玉県はわずか0.3%にとどまっています。
東京都・神奈川県・千葉県がそれぞれ5%前後という水準にあるのと比べると、首都圏の中でも極端に低い数字です。
コロナ前の2019年、埼玉県への訪日外国人宿泊者数は21万4540人泊で、全国38位という結果でした。
一方で、2020年1月から3月の調査では、埼玉県を訪れた外国人観光客の国籍別内訳が明らかになっています。
最も多かったのは中国で1万4542人、次いで台湾が6667人、韓国が6490人という順番でした。1人当たりのインバウンド消費額は9万4827円と、決して低い数字ではありません。
中国、台湾、韓国というアジアの国と地域からのお客さまが、埼玉県のインバウンドを支える中心的な存在になっています。
観光業に携わる方々からは「埼玉県はインバウンド回復の恩恵をあまり受けられていない」という、率直な声も上がっています。
2019年の観光入込客数で見ると、日本人観光客に限れば日帰り旅行の割合が98.5%と、集計可能な32県の中で1位という高さです。
これは、多くの人が埼玉県を「泊まる場所」ではなく「日帰りで立ち寄る場所」として捉えていることを示しており、宿泊施設への恩恵が他の地域と比べて少ないという課題につながっています。
こうした状況を受けて、埼玉県は「Just North of Tokyo」というキャッチフレーズを掲げ、東京に滞在中の外国人観光客に向けたプロモーションを強化しています。
東京から近く、古き良き日本文化を満喫できる街並みと、アニメの聖地を数多く持つという埼玉県ならではの強みを、どう海外に届けていくか。この課題への取り組みが、今まさに本格化し始めています。
事業者が知っておきたい埼玉県特有の受け入れポイント
ここまで見てきた埼玉県の観光地や、観光客の傾向をふまえて、実際にどんな受け入れの工夫ができるのか、具体的にお伝えします。
まず正直にお伝えしたいのが、埼玉県は訪日外国人の訪問率が首都圏の中でも極端に低く、日帰り観光客の割合が非常に高いという現実です。
これは事業者にとって、決して悪い話ばかりではありません。他の観光地がすでに競争の激しい状況にある中、埼玉県はまだ「これから」の段階にあります。
だからこそ、今から丁寧に受け入れ体制を整えておくことが、これから訪れる観光客の増加を、しっかりと自分の事業の成果につなげる大きな鍵になります。
次に意識したいのが、中国、台湾、韓国というアジアのお客さまが、埼玉県のインバウンドの中心をしめているということです。
繁体字や簡体字のメニュー、簡単な中国語や韓国語のあいさつを用意することは、それだけでお客さまに大きな安心感を与えることができます。
もう1つ、大切な視点が、日帰り客が圧倒的に多いという課題への対応です。
「Just North of Tokyo」という埼玉県のキャッチフレーズが示す通り、東京に宿泊しながら埼玉県を日帰りで訪れるお客さまが多いというのが実情です。
これは裏を返せば、いかにして「泊まりたくなる理由」を作れるかが、事業者にとって大きなチャンスになるということです。
夜の秩父夜祭や、ライトアップされた長瀞の紅葉など、日没後にしか味わえない体験を積極的に発信することが、宿泊需要の掘り起こしにつながります。
そして、川越の一番街で起きているオーバーツーリズムのように、一部エリアへの集中が招く課題にも目を向ける必要があります。
人気エリアだけに頼るのではなく、長瀞や秩父といった、まだ知られていない周辺の魅力もあわせて発信することで、観光客の分散と、県内全体の消費拡大の両方につなげることができます。
最後に、喜多院や秩父夜祭といった歴史ある観光地では、その背景にある物語を丁寧に伝える工夫も欠かせません。
川越が実は江戸よりも歴史が古い街だったという逸話を添えて紹介するだけで、街歩きという体験が、より深く記憶に残るものになります。
埼玉県の観光地で使える補助金・支援制度
インバウンド対応を進めるには、費用がかかります。ここでは、埼玉県の事業者が活用できる、代表的な補助金や支援制度をご紹介します。
補助金の内容や金額は毎年見直されるため、実際に申請する際は、必ず最新の情報を公式の窓口で確認してください。
インバウンド受入 環境整備 高度化事業
これは、観光庁が用意している全国向けの補助金です。
訪日外国人旅行者の周遊促進や消費拡大、地方誘客を図るため、観光地における個々のスポットや広域的な周遊にかかる、一体的な環境整備の取り組みを支援してくれます。
館内案内の多言語化や無料Wi-Fiの整備、キャッシュレス決済の導入、外国人向けの案内表示の設置などが対象になります。
国全体として、地方への外国人旅行者の誘客促進を目指している補助金であり、埼玉県内の事業者も広く活用できます(2026年7月時点の情報のため、内容は変わる可能性があります)。
経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業助成金
これは、埼玉県が用意している助成金です。物価高騰などの厳しい経営環境の中でも、創意工夫によって強みを伸ばし、立ち向かおうとする県内企業を応援する制度です。
業務改善コースをはじめ、いくつかのコースが用意されており、インバウンド対応の設備投資や、多言語対応の資材制作といった取り組みにも活用できる可能性があります(2026年7月時点の情報のため、内容は変わる可能性があります)。
海外展示会 出展支援補助金・海外向け製品改良 支援補助金
これは、埼玉県産業振興公社が用意している補助金です。県内の中小企業や中堅企業者が、海外への販路拡大に取り組む際の費用を支援してくれます。
海外展示会への出展費用や、海外向けに製品を改良する費用が対象になり、埼玉県ならではの特産品や工芸品を、海外に向けて発信したい事業者にとって、活用しやすい制度です(2026年7月時点の情報のため、内容は変わる可能性があります)。
市町村の独自の補助金
川越市や秩父市といった、観光地を抱える市町村でも、独自の補助金が用意されています。
事業承継にともなう店舗改修への補助や、企業競争力強化のための展示会出展支援など、地域の実情に合わせた制度が用意されており、市の商工課などで詳細を確認することができます(2026年7月時点の情報のため、内容は変わる可能性があります)。
相談窓口の活用も大切です
補助金は種類が多く、条件も複雑です。どの補助金が自分の事業に合っているのか、判断に迷うことも多いはずです。
そんなときは、商工会や商工会議所、そして中小企業庁が認定する「よろず支援拠点」といった、無料で相談できる窓口を頼るのがおすすめです。
埼玉県には、川越の小江戸情緒や、長瀞の渓谷美、秩父夜祭という独自の伝統行事まで、まだ世界に十分知られていない魅力があります。
こうした補助金や支援制度を上手に活用しながら、それぞれの事業者が、外国人観光客を迎える準備を、着実に整えていくことが、これからの埼玉県の観光をさらに大きく育てていく力になります。
埼玉県が秘める本当の魅力、事業者が世界へ届けるためにできること
埼玉県には「ダサイタマ」という自虐的な評判の裏に、川越の小江戸情緒や、長瀞の渓谷美、そして秩父夜祭という日本三大曳山祭の1つまで、まだ世界に十分知られていない、豊かな魅力が詰まっています。
喜多院に息づく徳川家とのゆかりや、川越が実は江戸よりも歴史が古い街だったという逸話も、埼玉県ならではの奥深さを物語っています。
数字が示す通り、埼玉県への訪日外国人の訪問率は首都圏の中でも極端に低く、日帰り観光客の割合が非常に高いという、他の都道府県とは異なる課題を抱えています。
一方で、川越の一番街ではすでにオーバーツーリズムが起き始めているという、正反対の現実も存在しています。
「観光地としての知名度不足」と「一部エリアへの集中」という、2つの課題に同時に向きあうことが、埼玉県のインバウンド戦略における最大のテーマです。
事業者にとって大切なのは、中国・台湾・韓国のお客さまへの多言語対応、日帰り客に「泊まりたくなる理由」を提供する工夫、そして人気エリアだけに頼らない、県内全体への観光客の分散です。
観光庁のインバウンド受入環境整備高度化事業や、埼玉県の経営力強化に向けた助成金をうまく活用すれば、費用の負担を抑えながら、その準備を進めることができます。
「東京のすぐ北」にありながら、まだ知られざる魅力にあふれた埼玉県。事業者1人ひとりの丁寧な受け入れの工夫が積み重なったとき、埼玉県はさらに多くの外国人観光客に選ばれる場所になっていくはずです。
華やかな観光PRの裏側と向きあうことが、埼玉県の未来を作る
この記事の冒頭で触れたように、埼玉県には「ダサイタマ」という自虐的な評判と、川越の一番街で起きているオーバーツーリズムという、一見正反対に見える2つの現実があります。
しかし、この2つは実は同じ根っこから生まれています。埼玉県の魅力が、川越や秩父といった、ごく一部の場所にしか知られていないということです。
観光地としての規模の小ささを指摘する声も、一部エリアへの観光客の集中も、結局は「埼玉県の魅力がまだ十分に広がっていない」という、たった1つの課題の、違う側面にすぎません。
だからこそ事業者にできることは、川越だけに頼らず、長瀞の渓谷美や秩父夜祭といった、まだ知られていない魅力を丁寧に発信し、観光客の目を県内全体に向けていくことです。
華やかな観光PRの裏にある現実から目をそらさず、まっすぐに向きあうことこそが、埼玉県が次のステージへ進むための、確かな一歩になります。


