インバウンド対応の多言語サイネージ導入にかかる費用|初期費用とランニングコストの実例

紙の張り紙だけでは、限界を感じ始めていませんか

ある観光地の複合施設では、増え続ける外国人旅行者に向けて、これまで紙の張り紙で、案内を伝えてきました。

しかし、旅行者の国籍は、日を追うごとに多様になっていきます。英語、中国語、韓国語だけでは足りず、タイ語やフランス語での案内も必要になってきました。

紙の張り紙を、その都度、何枚も作り直す作業に、担当者は、次第に疲れを感じるようになっていました。

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営業時間が変わるたびに、イベントの内容が変わるたびに、紙を作り直し、古い紙をはがし、新しい紙を貼り直す。

この繰り返しに、限界を感じ始めていた時、担当者の目に留まったのが、多言語のデジタルサイネージ、いわゆる電子看板でした。

しかし、電子看板と聞くと、多くの人が、まず「高そうだ」という印象を抱きます。大きな企業や、豪華な商業施設だけが導入できる、特別な設備だと思い込んでいる事業者も少なくありません。

実際のところ、多言語サイネージの導入には、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。初期費用と、導入した後にかかり続けるランニングコスト、その両方を、具体的な数字とともに整理します。

多言語サイネージとはどんな仕組みか

多言語サイネージとは、画面に案内やメニューを映し出し、必要に応じて、表示する言語を切り替えられる仕組みのことです。

紙の張り紙のように、決まった言葉が印刷されたままの状態とは違い、画面の中身は、いつでも自由に書き換えることができます。

例えば、一枚の画面に、日本語、英語、中国語、韓国語と、複数の言語を順番に表示させることができます。

旅行者は、自分がわかる言語が画面に表示されるまで、少し待つだけで、必要な情報を得ることができます。中には、タッチパネルになっていて、旅行者自身が、見たい言語をその場で選べるタイプの画面もあります。

紙の張り紙と比べた時、多言語サイネージの一番の強みは、情報を更新する時の手軽さにあります。

営業時間が変わった時も、新しいメニューを追加したい時も、パソコンやタブレットから、画面の中身を書き換えるだけで、すぐに反映させることができます。

紙を何枚も作り直し、貼り替えるという手間から、完全に解放されるのです。

さらに、離れた場所からでも、画面の内容を書き換えられる仕組みを使えば、複数のお店や施設で使っている画面を、まとめて一度に更新することもできます。

冒頭で紹介した複合施設のように、頻繁に案内を変える必要がある場所ほど、この仕組みの恩恵を、大きく受けられます。

導入にかかる初期費用の実例

多言語サイネージを導入する時、まず気になるのが、最初にかかる初期費用です。この費用は、大きく分けて4つの要素から成り立っています。

一つ目は、画面そのものにあたる、ディスプレイの費用です。屋内で使う標準的な大きさのものであれば、10万円から40万円ほどが目安になります。

二つ目は、画面に映す内容を再生するための、小さな機械の費用です。この機械は、専門的にはSTBと呼ばれることもあり、3万円から10万円ほどが目安です。

三つ目は、画面を実際に壁や柱に取り付けるための、設置工事の費用です。設置する場所や、取り付け方によって金額は変わりますが、5万円から20万円ほどが、一般的な目安とされています。

四つ目は、最初に画面に映す、案内やメニューといった中身を作るための、コンテンツ制作の費用です。こちらも内容の作り込み具合によって幅がありますが、5万円から30万円ほどが目安です。

これら4つの要素をすべて合わせると、屋内に設置する標準的な多言語サイネージであれば、1台あたりおよそ20万円から60万円ほどが、初期費用の目安になります。

屋外に設置する場合や、画面が大きい場合、タッチパネルの機能を加える場合には、これよりも高くなり、100万円を超えることもあります。

見積もりを取る時に気をつけたいのが、画面本体の金額だけを見て、予算を決めてしまわないことです。

設置工事や、コンテンツ制作の費用が加わることで、当初想定していた金額の1.5倍から2倍ほどになることも珍しくありません。

見積もりを依頼する時には、この4つの要素すべてが含まれているかどうかを、必ず確認しておくことが大切です。

(情報は2026年7月時点のものです。金額は依頼先や設置条件によって変わりますので、複数の業者から見積もりを取ることをおすすめします。)

導入後にかかるランニングコストの実例

多言語サイネージは、導入した時の初期費用だけでなく、その後も継続してかかる費用があることを、忘れてはいけません。

特に、インターネットを通じて画面の内容を管理する、クラウド型と呼ばれる仕組みを使う場合、月々の利用料金がかかります。

この月額料金は、目安として、1台あたり3万円から10万円ほどが相場とされています。管理できる画面の台数や、使える機能の幅によって、料金は変わってきます。

見落とされがちなのが、電気代です。サイネージの画面は、営業時間中、ずっと表示され続けているため、思っている以上に電力を使います。

特に、画面のサイズが大きくなるほど、電気代の負担も大きくなっていきます。

また、インターネットに接続するための通信費も、忘れずに計算に入れておく必要があります。

クラウド型の仕組みを使う場合、画面の内容を最新の状態に保つために、常にインターネットとつながっている状態を維持しなければなりません。

こうした月々の費用を、初期費用だけを見て見過ごしてしまうと、後になって、想定以上の負担に驚くことになります。

導入を検討する時には、初期費用とあわせて、月々どれくらいの費用がかかり続けるのかを、必ず確認しておくことが大切です。

費用を抑えて導入するための工夫

ここまで見てきた金額を目にして、「やはり自分のお店には難しいかもしれない」と感じてしまった人もいるかもしれません。しかし、費用を抑えながら、多言語サイネージを導入する方法も、いくつか存在します。

まず知っておきたいのが、補助金を活用できる場合があるということです。

小規模事業者持続化補助金など、販路開拓のための取り組みとして、サイネージの導入が補助金の対象になることがあります。

また、自治体によっては、商店街の活性化や、デジタル化を後押しするための、独自の補助金を用意している場合もあります。自分の地域に、活用できる制度がないか、一度確認してみる価値があります。

次に大切なのが、最初から大がかりな設備を目指さないことです。

大きな画面を何台も設置するのではなく、まずは小型のサイネージを一台だけ導入し、効果を見ながら、少しずつ台数を増やしていくという進め方もできます。

スタンドアロン型と呼ばれる、インターネットに接続せず、単体で動く小型のサイネージであれば、初期費用を数万円程度に抑えられる場合もあります。

すべての場所に設置しようとせず、一番効果が見込める場所、例えば、入り口や、お客さんが立ち止まりやすいレジ周りなど、限られた場所に絞って導入することも、費用を抑えながら効果を得るための、現実的な工夫です。

(情報は2026年7月時点のものです。補助金の内容や対象条件は変わることがありますので、最新の情報を各自治体や制度の窓口でご確認ください。)

小さな画面一枚が、これからのお客さんとの出会い方を変えていきます

冒頭で紹介した複合施設の担当者は、紙の張り紙を作り替え続ける日々に、疲れを感じていました。

しかし、多言語サイネージを導入したことで、その負担は大きく軽くなりました。営業時間の変更も、新しいイベントの案内も、画面の中身を書き換えるだけで、すぐに旅行者に届けられるようになったのです。

電子看板と聞くと、大きな金額を想像してしまうかもしれません。

しかし、実際には、小型のものから始めたり、補助金を活用したりすることで、思っているよりも手の届きやすい範囲で、導入を始めることができます。

紙の張り紙では実現できなかった、リアルタイムでの情報更新。これは、日々変化する状況に対応しなければならない、これからの店舗にとって、大きな武器になります。

すべてを一度に整えようとする必要はありません。まずは一台、小さな画面から始めてみてください。

その小さな画面が、これから店を訪れる、たくさんの外国人旅行者との出会い方を、静かに、しかし確実に変えていきます。

この記事を書いた人

旅行、観光、IT・Webマーケティングの仕事に25年ほど携わってきた40代。現在はインバウンド対応に悩む店舗・宿泊施設の方々に向けて、実際に使えるツールや方法をまとめています。導入コストや使い勝手を含めて丁寧に検証することを心がけています。