キャッシュレス決済導入に使える補助金比較|インバウンド対応の設備投資でもらえる制度はどれか

全額自己負担だと思い込んで、導入を諦めていませんか

小さなお土産物店を営む店主は、外国人旅行者が増える中で、キャッシュレス決済の導入を考えるようになりました。

しかし、見積もりを取ってみると、決済端末の購入費用や、初期設定にかかる費用が、思っていたよりも大きな金額になることがわかりました。

店主は、「この金額を、全部自分の店で用意しなければならないのか」と、肩を落としてしまいました。

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日々の売り上げをやりくりする中で、まとまった金額を、一度に用意することは簡単ではありません。結局、その店主は、キャッシュレス決済の導入を、先延ばしにすることに決めてしまいました。

しかし、この判断は、少しもったいないものだったかもしれません。実は、キャッシュレス決済の導入には、活用できる補助金が、いくつも用意されています。

国が用意している制度もあれば、都道府県や市区町村が、独自に用意している制度もあります。こうした制度をうまく活用すれば、自己負担を大きく減らしながら、導入を進めることができます。

キャッシュレス決済導入に使える補助金にはどんな種類があるか

キャッシュレス決済の導入に活用できる補助金には、いくつかの種類があります。それぞれ、目的や対象となる事業者が異なるため、自分の店に合った制度を選ぶことが大切です。

一つ目は、デジタル化・AI導入補助金です。以前はIT導入補助金という名前で知られていた制度で、ソフトウェアや機器の購入にかかる費用を支援してくれます。

キャッシュレス決済端末の導入にも、活用できる場合があります。

二つ目は、小規模事業者持続化補助金です。小規模な事業者が、販路を広げたり、業務の効率を上げたりするための取り組みを支援する制度で、キャッシュレス決済端末の購入費用も、対象経費に含まれる可能性があります。

三つ目は、業務改善助成金です。これは、他の制度とは少し性質が異なり、従業員の最低賃金を引き上げることとセットになった制度です。

賃金を引き上げる代わりに、設備投資にかかった費用の一部が支援される仕組みになっています。

四つ目は、都道府県や市区町村が、独自に用意している補助金です。地域によっては、外国人観光客の受け入れを強化するための、独自の支援制度を設けている場合があります。

これら4つの制度は、それぞれ目的も、対象になる条件も違います。自分の店の状況に合わせて、どの制度が使えそうか、順番に見極めていくことが、無駄のない申請につながります。

それぞれの補助金の特徴を比較する

①デジタル化・AI導入補助金

デジタル化・AI導入補助金は、中小企業や小規模事業者が、ITツールを導入する時にかかる費用を支援する制度です。

ソフトウェアの購入費用や、クラウドサービスの利用料、そして、キャッシュレス決済のための機器の購入費用などが、対象経費として認められる場合があります。

この制度には、いくつかの申請枠が用意されています。その中でも、インボイス制度への対応を目的とした枠が、キャッシュレス決済端末の導入に活用しやすいとされています。

補助される割合は、かかった費用のおよそ2分の1から4分の3ほどで、上限額は200万円ほどとされています。

この補助金を申請する時に気をつけたいのが、自分で直接申請するのではなく、IT導入支援事業者と呼ばれる、登録された事業者を通して申請する仕組みになっているという点です。

導入したいキャッシュレス決済のサービス会社が、この支援事業者として登録されているかどうかを、事前に確認しておく必要があります。

また、申請する年度によって、公募される時期や、細かい条件が変わることも多いため、導入を考え始めたら、早めに情報を集め、支援事業者に相談しておくことが大切です。

(情報は2026年7月時点のものです。補助率や上限額、公募時期は年度によって変わりますので、必ず最新の公募要領をご確認ください。)

②小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、その名前の通り、小規模な事業者が、持続的に経営を続けていくための取り組みを支援する制度です。

新しいお客さんを増やすための販路開拓や、日々の業務を効率よく進めるための工夫にかかる費用が、対象になります。

キャッシュレス決済端末の導入は、この「業務の効率化」の一環として、対象経費に含まれる可能性があります。

ただし、単に決済端末を導入したいという理由だけでは、申請することはできません。

この補助金を活用するためには、自分のお店が、どんな経営計画を持っているのか、どのように販路を広げていきたいのかを、あらかじめ整理し、書類にまとめる必要があります。

この計画づくりには、地域の商工会や商工会議所の支援を受けながら進めることができます。

一人で書類を作るのが不安な場合でも、相談しながら準備を進められる点は、初めて補助金を申請する事業者にとって、心強い部分です。

この補助金の特徴は、単なる設備投資の支援ではなく、店の将来をどう描いていくか、その計画づくり自体が、申請の中心になっているという点です。

キャッシュレス決済の導入を、より大きな経営改善の一部として位置づけたい場合には、この制度が向いています。

(情報は2026年7月時点のものです。対象経費や申請枠は年度によって変わりますので、必ず最新の公募要領をご確認ください。)

③業務改善助成金

業務改善助成金は、他の3つの制度とは、少し違う性質を持っています。

この制度は、事業場で働く従業員の最低賃金を引き上げることを条件に、その引き上げに伴う負担を、設備投資への助成という形で支援してくれる仕組みです。

つまり、キャッシュレス決済端末を導入したいという理由だけで、そのまま申請できる制度ではありません。

従業員の賃金を、一定額以上引き上げることが、前提条件になります。

賃金の引き上げ額に応じて、いくつかのコースが用意されており、引き上げ額が大きいほど、助成される金額の上限も高くなる仕組みになっています。

特例の条件に当てはまる事業者であれば、最大で600万円ほどの助成を受けられる場合もあります。

この制度が向いているのは、もともと従業員の賃金を引き上げる予定があり、それに合わせて、レジ周りの設備も一新したいと考えている事業者です。

賃上げと設備投資、この二つを同時に進めたい場合には、他の制度よりも、まとまった金額の支援を受けられる可能性があります。

反対に、賃金の引き上げまでは考えていない、まずは決済端末の導入だけを進めたいという場合には、他の3つの制度の方が、申請しやすいかもしれません。

自分の店が、今どんな課題を抱えているのかによって、この制度が向いているかどうかが、大きく変わってきます。

(情報は2026年7月時点のものです。助成額やコースの内容は変わることがありますので、必ず最新の情報をご確認ください。)

④自治体独自のインバウンド対応向け補助金

国が用意している制度以外にも、都道府県や市区町村が、独自に用意している補助金があります。中でも注目したいのが、外国人観光客の受け入れを強化することを目的とした、地域ごとの支援制度です。

例えば、ある都市では、宿泊施設や飲食店を対象に、外国人観光客への対応力を高める取り組みを支援する制度を設けています。

この中には、多言語対応の案内表示だけでなく、キャッシュレス決済機器の導入も、対象として含まれている場合があります。

こうした自治体独自の制度は、国の制度に比べて、地域の実情に合わせた、きめ細やかな内容になっていることが多いのが特徴です。

ただし、対象となる地域が、その自治体の中に事業所を置く事業者に限られていたり、募集される期間が短く、気づいた時にはすでに締め切られていたりすることもあります。

自分の事業所がある都道府県や市区町村の公式サイトを確認したり、「自分の住んでいる地域名 インバウンド 補助金」といった言葉で検索したりすることで、思わぬ支援制度が見つかることがあります。

国の制度だけに目を向けるのではなく、自分の地域ならではの制度がないかどうかも、あわせて確認しておくことが大切です。

(情報は2026年7月時点のものです。制度の有無や内容は自治体によって異なりますので、必ず各自治体の窓口や公式サイトでご確認ください。)

自分の店にはどれが向いているか

ここまで紹介してきた4つの制度は、それぞれ目的も、申請の手間も異なります。自分の店の状況に照らし合わせながら、どの制度が向いているのかを整理していきます。

まず、キャッシュレス決済端末の導入そのものを、シンプルに支援してほしいと考えている場合には、デジタル化・AI導入補助金が向いています。

ITツールの導入という枠組みの中で、比較的取り組みやすい制度です。

次に、キャッシュレス決済の導入をきっかけに、お店全体の経営計画を見直し、新しいお客さんを増やす取り組みにもつなげていきたいと考えている場合には、小規模事業者持続化補助金が向いています。

手間はかかりますが、商工会や商工会議所のサポートを受けながら、じっくりと計画を練ることができます。

もし、従業員の賃金を引き上げることも、あわせて検討している場合には、業務改善助成金が、まとまった支援を受けられる選択肢になります。

賃上げと設備投資を、同時に進めたい事業者に向いています。

そして、自分の事業所がある地域で、外国人観光客の受け入れを強化するための、独自の補助金が用意されていないかどうかも、必ず確認しておきたいところです。

地域独自の制度は、国の制度よりも、条件が合いやすい場合があります。

一つの制度だけにこだわらず、複数の制度を比較しながら、自分の店の目的や状況に、一番合うものを見極めていくことが、無駄のない選び方につながります。

思い込みで諦める前に、まず調べてみることから始めましょう

冒頭で紹介したお土産物店の店主は、見積もりの金額を見て、「全部自分の店で用意しなければならない」と思い込み、キャッシュレス決済の導入を諦めてしまいました。

しかし、実際には、デジタル化・AI導入補助金、小規模事業者持続化補助金、業務改善助成金、そして地域独自の制度と、活用できる可能性のある支援は、いくつも用意されています。

補助金の申請には、確かに、書類の準備や、計画を練る手間がかかります。

しかし、その手間を惜しんで、最初から「自分には関係ない」と諦めてしまうのは、あまりにももったいないことです。使えるはずだった支援を、自ら手放してしまうことになりかねません。

まずは、自分の店が対象になりそうな制度がないか、調べてみることから始めてみてください。

商工会や商工会議所、あるいは自治体の窓口に相談してみるだけでも、思わぬ選択肢が見つかることがあります。

思い込みで諦めてしまう前に、一歩踏み出して調べてみること。その小さな行動が、これから先の店の姿を、大きく変えるきっかけになるかもしれません。

この記事を書いた人

旅行、観光、IT・Webマーケティングの仕事に25年ほど携わってきた40代。現在はインバウンド対応に悩む店舗・宿泊施設の方々に向けて、実際に使えるツールや方法をまとめています。導入コストや使い勝手を含めて丁寧に検証することを心がけています。