北海道と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、広い大地、雪と氷の世界、そしておいしい食べ物ではないでしょうか。
日本の最も北にあるこの島は、他の都道府県とはまったく違うスケールの自然と、独自の文化を持っています。
北海道は、日本の総面積のおよそ5分の1をしめる、圧倒的な広さを持つ場所です。
北は稚内、南は函館、東は根室、西は小樽と、それぞれの地域でまったく違う景色や気候に出会えます。この広さこそが、北海道の最大の武器です。
ひとつの都道府県の中に、雪山も温泉も海も牧場も花畑もある。これほど多様な自然を、1つの場所でまとめて楽しめる都道府県は、日本中を見わたしてもそう多くありません。
数字を見ても、北海道の勢いは止まりません。2025年、北海道内の延べ宿泊者数は4,543万人となり、3年連続で過去最多を更新しました。
その中でも、外国人の延べ宿泊者数は1,281万人にのぼり、前の年と比べて24.3%も増えています。これは2年連続の過去最多です。
円安の影響や、飛行機の便数が増えたことが、外国人観光客の増加を強く後押ししています。
北海道は、道北・道南・道央・道東という4つのエリアに分けて考えられることが多く、それぞれのエリアがまったく違う顔を持っています。
雪と自然にあふれる道北、歴史と港町の風情がある道南、都市の便利さと観光地が集まる道央、雄大な国立公園と野生動物に出会える道東。
この記事では、この4つのエリアに分けて、それぞれの魅力を丁寧にご紹介していきます。
外国人観光客にとって、北海道の魅力は、日本の他の地域では味わえない「圧倒的なスケール感」にあります。
見わたす限りの雪原、地平線まで続くラベンダー畑、透きとおるような青い湖。そして、新鮮な海の幸や、濃厚な乳製品といった食文化も、多くの外国人観光客の心をつかんでいます。
一方で、これだけ広い北海道だからこそ、事業者にとっての課題もあります。移動にかかる時間が長く、季節によって観光客の数に大きな差が出やすいという点です。
冬は雪を目当てにした観光客でにぎわいますが、季節が変われば、その土地ならではの違う魅力を、どう発信していくかが問われます。
道南エリアの観光地紹介
道南は、北海道の中でも最も早く外国との交流が始まった場所です。函館という港町を中心に、歴史の重みと、大地のエネルギーを感じられる景色が広がっています。ここでは、道南の代表的な観光地を、1つずつご紹介します。
五稜郭 ごりょうかく
五稜郭は、函館にある星の形をした城です。江戸時代の終わりごろ、函館が港として開かれたことをきっかけに、幕府がこの地を守るために築きました。
安政4年から工事が始まり、元治元年に完成しました。西洋の城の作り方を取り入れた、日本では珍しい形の城です。
五稜郭は、箱館戦争と呼ばれる戦いの舞台としても知られています。榎本武揚や土方歳三といった、幕府側の武士たちが最後まで戦った場所です。
今は国の特別史跡に指定され、公園として整備されています。春には約1500本の桜が咲きほこり、冬には堀のまわりが光でいろどられます。
星の形をした城の姿は、タワーに登って上から見下ろすと、はっきりと目に飛びこんできます。
トラピスチヌ修道院
トラピスチヌ修道院は、函館にある、日本で最初の女性の修道院です。1898年に、フランスから来た8人の修道女によって作られました。今の建物は1927年に建て直されたもので、赤いレンガの外壁と、丸いアーチの窓が特徴です。
中に入ることはできませんが、前庭を見学することができ、静かで落ちついた空気を味わえます。修道女たちが手作りする焼き菓子は、お土産としてとても人気があります。
祈りと労働を大切にする生活の中で作られる、素朴でやさしい味わいが、多くの人を引きつけています。
立待岬 たちまちみさき
立待岬は、函館山のふもとにある、太平洋を見わたせる岬です。切り立った崖の先から見える海の景色は、雄大でありながら、どこかもの悲しさも感じさせます。
この場所は、歌人の石川啄木とゆかりが深く、啄木一族のお墓もあります。詩人たちが心を寄せた場所として、静かに旅を振り返りたい人にぴったりのスポットです。
湯の川温泉 ゆのかわおんせん
湯の川温泉は、函館空港からとても近い場所にある温泉地です。350年以上の歴史を持ち、北海道三大温泉の1つに数えられています。無色透明で、肌にしっとりとなじむ泉質が特徴です。
函館空港から近いという立地の良さから、函館を訪れる観光客の多くがこの湯の川温泉に泊まります。冬には、温泉に入るサルの姿が見られることもあり、日本ならではの温泉文化を、旅の最初や最後に手軽に味わえる場所です。
大沼 おおぬま
大沼は、活火山である駒ヶ岳のふもとに広がる、大沼、小沼、じゅんさい沼という3つの湖から成る景勝地です。
126もの小さな島が浮かぶ姿は「湖の松島」と呼ばれ、古くから道南を代表する景色として親しまれてきました。1958年には国定公園に指定されています。
春には水芭蕉が白く咲き、夏には手漕ぎボートで湖をめぐることができます。秋は湖畔の木々が黄金色に染まり、冬は湖が凍ってワカサギ釣りが楽しめます。
レンタサイクルで湖のまわりを走れば、季節ごとに違う表情を持つ大沼を、じっくりと味わうことができます。
洞爺湖 とうやこ
洞爺湖は、支笏洞爺国立公園の中心となる、日本で3番目に大きなカルデラ湖です。約11万年前の大きな噴火によって生まれた湖で、周囲は約43キロメートルにおよびます。
湖の中央には中島と呼ばれる4つの島が浮かび、北側には秀麗な羊蹄山、南側には活火山の有珠山と昭和新山を望むことができます。
湖のほとりには洞爺湖温泉があり、湖と山々の景色を眺めながら湯につかれます。花火大会が湖上で開かれることでも知られ、夜の湖面に映る光の景色は、忘れられない思い出になります。
支笏湖 しこつこ
支笏湖は、洞爺湖と同じく支笏洞爺国立公園にあるカルデラ湖です。日本有数の透明度を誇り、その澄みきった水の青さは、多くの人を驚かせます。
アイヌの人々が「大きな窪地」と呼んだこの湖は、周辺に多くの火山を持つ、自然のエネルギーにあふれた場所です。
札幌から車で1時間ほどというアクセスの良さも魅力です。湖でのカヌー体験や、周辺の温泉でのんびり過ごす時間など、都会から少し足をのばすだけで、大自然を満喫できます。
登別温泉 のぼりべつおんせん
登別温泉は、北海道を代表する温泉地の1つで、「温泉のデパート」と呼ばれるほど、たくさんの種類の温泉が湧き出ています。
温泉街の奥には、地獄谷と呼ばれる、直径450メートルの大きな谷があります。この谷は、約1万年前の火山活動によってできたもので、谷底からは今もぼこぼこと温泉が湧き出し、白い煙が立ちのぼっています。
その迫力ある景色から「鬼の棲む地獄」と呼ばれるようになりました。1周20分ほどの遊歩道が整備されており、夜には道が灯りでほのかに照らされる、幻想的な散策も楽しめます。
硫黄の匂いと立ちのぼる湯気は、まるで別の惑星に来たかのような感覚を味わわせてくれます。
羊蹄山 ようていざん
羊蹄山は、その美しい円すいの形から「蝦夷富士」とも呼ばれる山です。洞爺湖のほとりから眺めると、湖と山が同時に視界に入る絶景を楽しめます。
四季を通じて、雪をかぶった姿や、緑につつまれた姿など、さまざまな表情を見せてくれる、道南の自然を象徴する山です。
小樽運河 おたるうんが
小樽運河は、小樽の街の象徴とも言える水路です。大正12年に完成し、日本では珍しい、海の沖合いを埋め立てて作る方式で作られました。全長は1140メートルにおよび、ゆるやかに曲がりながら続いています。
運河の両岸には、レンガ造りの倉庫群が今も立ち並び、北海道の開拓を支えた港町の歴史を伝えています。夜になると、ガス灯が運河沿いをやわらかく照らし、水面に映るその灯りは、ノスタルジックで美しい景色を作り出します。
積丹半島 しゃこたんはんとう
積丹半島は、日本海に突き出た、絶景が続く半島です。中でも神威岬は、積丹ブルーと呼ばれる、澄みきったコバルトブルーの海を望める場所として有名です。
岬の先端まで続く遊歩道を20分から30分ほど歩くと、周囲300度が見渡せる展望スペースにたどり着きます。
かつてこの岬は、女性の立ち入りが禁じられていたという伝説が残る、歴史深い場所でもあります。
6月から8月にかけては、うに漁が解禁され、その時期にしか味わえない濃厚なうに丼も、積丹半島を訪れる楽しみの1つです。
札幌市の時計台
札幌市の時計台は、1878年に、札幌農学校の演武場として建てられた建物です。三角屋根の上に大きな時計を乗せた姿は、現役で動く時計台として日本最古のものであり、国の重要文化財にも指定されています。
もともとは鐘楼だけが屋根にありましたが、開拓を指導したクラーク博士の教頭が、正しい時刻を町の人々に知らせることの大切さを説き、1881年に時計塔が作られました。
今も1時間ごとに、時刻の数だけ鐘の音が鳴りひびきます。白い壁とワインレッドの屋根のコントラストは、札幌の開拓の歴史を今に伝える、大切なシンボルです。
札幌市の大通り公園
大通り公園は、札幌の中心部を東西につらぬく、長さ約1.5キロメートルの緑地帯です。西1丁目から西12丁目まで続き、季節ごとの花や芝生、樹木が植えられています。
冬に開かれるさっぽろ雪まつりの会場としても知られ、大きな雪像が公園いっぱいに並ぶ光景は、世界中から観光客を集めています。時計台からも歩いてすぐの場所にあり、札幌観光の中心として、多くの人でにぎわっています。
札幌市の羊ケ丘展望台 ひつじがおかてんぼうだい
羊ケ丘展望台は、札幌の街を見わたせる高台にある展望スポットです。広い牧草地では羊がのんびりと草を食み、200万人都市の中にいながら、北海道らしいのどかな景色を楽しめます。
丘の上には、1976年に建てられたクラーク博士の像があります。右手を高く挙げるポーズは「少年よ、大志を抱け」という言葉とともに、多くの人に親しまれています。この像を背景に写真を撮ることは、札幌観光の定番になっています。
定山渓温泉 じょうざんけいおんせん
定山渓温泉は、札幌の奥座敷と呼ばれる温泉地です。慶応2年に、修験僧の美泉定山が、アイヌの人々の案内で泉源にたどり着いたことから、その歴史が始まりました。開湯からすでに160年近くがたっています。
温泉街は豊平川の渓谷沿いに広がり、56か所もの源泉から、毎分8600リットルもの温泉が湧き出ています。塩分を含んだ泉質は、体の芯からしっかりと温めてくれます。
街のあちこちにかっぱの像が置かれ、河童伝説が今も語りつがれていることも、定山渓ならではの魅力です。
ウポポイ
ウポポイは、白老町にある、アイヌ文化を復興し、次の世代に伝えていくための国立の施設です。2020年に開業し、国立アイヌ民族博物館と、国立民族共生公園という2つの施設から成り立っています。
先住民族であるアイヌの歴史や文化を、貴重な資料や展示を通じて学ぶことができるほか、伝統的な歌や踊り、工芸品づくりといった体験プログラムも用意されています。
長い歴史の中で受けつがれてきたアイヌの文化を、五感を使って感じられる、日本でも数少ない貴重な場所です。
道央エリアの観光地紹介
道央には、雄大な山々と、自然が作り出した渓谷の絶景が広がっています。ここでは、まず前半の4か所を丁寧にご紹介します。
旭山動物園 あさひやまどうぶつえん
旭山動物園は、旭川市にある、日本最北の動物園です。1967年に開園しましたが、一時は入園者が大きく減ってしまった時期もありました。
転機となったのは、動物が本来持っている習性や行動をそのまま見せる「行動展示」という展示方法への変更です。この工夫が実を結び、1997年以降、入園者数は劇的に増えていきました。
円柱の水そうを泳ぎまわるアザラシや、頭の上を飛ぶように泳ぐペンギン、水中に飛びこむホッキョクグマなど、動物たちの自然な姿を間近で見られることが最大の魅力です。
冬に行われるペンギンの散歩や、飼育スタッフが解説をしながら食事の様子を見せる「もぐもぐタイム」は、特に人気の高いイベントです。
年間140万人以上が訪れ、海外からの観光客も数多く足を運ぶ、北海道を代表する観光地です。
大雪山 たいせつざん
大雪山は、北海道の中央にそびえる、山々の連なりです。その中でも旭岳は標高2,291メートルで、北海道でいちばん高い山です。
アイヌの人々は、この雄大な山々を「カムイミンタラ」、つまり神々が遊ぶ庭と呼んできました。
旭岳ロープウェイを使えば、標高1,600メートルまで一気に登ることができ、そこから山頂までの登山道では、チングルマなどの高山植物を間近で観察できます。
大雪山国立公園は北海道最大の国立公園で、天人峡や層雲峡といった景勝地も、この大雪山の一部に含まれています。
手つかずの自然が今も広がるこの場所は、季節ごとにまったく違う表情を見せてくれます。
天人峡 てんにんきょう
天人峡は、忠別川の上流に広がる、険しい渓谷です。両岸の岩壁には柱状節理と呼ばれる、規則正しい割れ目を持つ岩肌が続いています。
渓谷の奥には、落差270メートルという道内最大級の羽衣の滝があり、日本の滝百選にも選ばれています。
静かな渓谷の奥から流れ落ちる滝の姿は、荒々しさと美しさをあわせ持っています。近くには温泉もあり、大自然の景色を眺めながら、旅の疲れをゆっくりといやすことができます。
層雲峡 そううんきょう
層雲峡は、大雪山の北のふもと、石狩川の上流に広がる峡谷です。約24キロメートルにわたって、柱状節理の断崖絶壁が続いており、そのスケールの大きさは、訪れる人を圧倒します。
アイヌの人々は、この場所を神々が遊ぶ庭という意味を持つ言葉で呼んできました。
層雲峡温泉から黒岳の5合目までを結ぶ黒岳ロープウェイに乗れば、7分ほどで標高1,300メートルの世界にたどり着きます。
眼下に広がる樹海と石狩川、そして柱状節理の岩壁を上空から眺める景色は、まさに圧巻です。
秋には日本でも早い時期に紅葉が始まり、山肌が黄金色や赤色にそまる景色は、多くの観光客を引きつけています。
冬にはスキーも楽しめ、1年を通して大雪山の自然を体感できる場所です。
富良野 ふらの
富良野は、色とりどりの花畑が広がる、北海道を代表する観光地です。中でもファーム富田は、丘一面に紫のじゅうたんを敷いたようなラベンダー畑が広がる、富良野を象徴する場所です。
ラベンダーの見ごろは、例年6月下旬から8月上旬にかけてです。
ラベンダーのほかにも、ポピーやマリーゴールドなど、季節ごとにさまざまな花が咲きほこり、甘い香りに包まれながら、丘を歩いてまわることができます。
テレビドラマの舞台にもなった土地で、四季を通じて自然と人の暮らしが調和した景色を楽しめます。
美瑛 びえい
美瑛は、富良野のすぐ近くにある、丘の町です。緑や黄色、茶色に色分けされた畑が、まるでパッチワークのように丘を埋めつくす景色は「パッチワークの路」と呼ばれ、美瑛を代表する景観になっています。
畑では、同じ土地で毎年ちがう作物を育てているため、この色とりどりの模様が生まれるのです。
もう1つの見どころが青い池です。鮮やかな青色をした水面に、白く立ちかれたカラマツの木が並ぶ姿は、まるで絵本の中の景色のようです。
この幻想的な美しさから、国内だけでなく海外からも多くの観光客が訪れる、人気の写真撮影スポットになっています。
北海道ガーデン街道
北海道ガーデン街道は、大雪から富良野、十勝までを結ぶ、全長およそ250キロメートルの道に沿って作られた、8つの庭園をめぐるルートです。
それぞれの庭園が、北海道ならではの気候と自然を生かした、個性豊かな庭づくりをしています。
大雪山を望む高原に広がる庭園や、日本で初めてのコニファーガーデン、日高山脈のふもとで圧倒的なスケールの自然を感じられる庭園など、その表情はさまざまです。
テレビドラマの舞台となった庭も含まれており、花と緑に包まれながら、北海道の広大な大地をゆっくりと味わえる、贅沢な旅のルートです。
襟裳岬 えりもみさき
襟裳岬は、日高山脈の南のはしにある、太平洋に鋭く突き出た岬です。ここは日本でも有数の強い風が吹く場所として知られ、風速10メートル以上の風が吹く日が、1年のうち260日を超えるといわれています。
岬の沖には岩礁が1.5キロメートルにわたって続き、ゼニガタアザラシがのんびりと日光浴をする姿を見ることができます。
強い風と、荒々しい岩礁の景色が織りなす襟裳岬は、日本の名勝にも指定されています。館内で強い風を体感できる施設もあり、この土地ならではの自然の厳しさと美しさを、肌で感じることができます。
タウシュベツ川橋梁 たうしゅべつがわきょうりょう
タウシュベツ川橋梁は、上士幌町の糠平湖にかかる、コンクリート造りのアーチ橋です。1937年に完成した、かつての鉄道路線で使われていた橋で、鉄道が廃線になった今も、その姿を残しています。
古代ローマの水道橋を思わせる、独特な美しさを持つ建造物です。
この橋の最大の特徴は、季節によって糠平湖に沈んだり、姿を現したりするということです。夏には湖の水位が上がり、橋は湖の底に沈んでしまいます。
そして、水位が下がる冬になると、凍った湖面の上に再びその姿を現します。この移り変わりから「幻の橋」と呼ばれ、その姿をひと目見ようと、全国から多くの観光客や写真愛好家が訪れています。
道北エリアの観光地紹介
道北は、日本の最も北に位置する、最果てのロマンあふれるエリアです。まずは前半の3か所をご紹介します。
宗谷岬 そうやみさき
宗谷岬は、北海道本島の最北端にある岬です。北緯45度31分22秒という場所に位置し、日本という国の北の終着点として、圧倒的な存在感を放っています。
岬の中央には「日本最北端の地の碑」が立ち、北極星の形をモチーフにした三角形のデザインが印象的です。かたわらには、かつて樺太へ渡った探検家、間宮林蔵の像もあります。
空気が澄みわたる日には、40キロメートル以上先にあるサハリンの島影を見ることができ、日本の端にたどり着いたという実感を強く与えてくれます。
吹きぬける力強い風とともに、どこまでも続く水平線を眺める体験は、この場所でしか味わえない特別なものです。
豊富温泉 とよとみおんせん
豊富温泉は、日本最北にある温泉地です。大正時代の終わりごろ、石油を掘りあてようとしていたときに、天然ガスとともに温泉が湧き出したことから、その歴史が始まりました。
お湯はわずかに黄色くにごり、石油の匂いがかすかにするという、世界でも珍しい泉質を持っています。
この温泉は、古くからやけどや皮膚の病気に効くとされてきましたが、近年は乾癬やアトピー性皮膚炎に高い効果があることが注目されています。
皮膚の悩みを持つ人たちからは「奇跡の湯」とも呼ばれ、全国から湯治のために訪れる人が絶えません。利尻礼文サロベツ国立公園の玄関口としても知られ、自然を楽しむ観光客からも人気を集めています。
サロベツ原野 さろべつげんや
サロベツ原野は、豊富町と幌延町の海岸線沿いに広がる、日本でも最大規模の高層湿原です。東西8キロメートル、南北27キロメートルにおよぶ広大な湿原で、2005年にはラムサール条約にも登録されました。
もともとこの土地は、海とつながる大きな湖でした。植物が長い年月をかけて枯れて泥炭となることで、少しずつ湿原へと姿を変えていったのです。
夏には、サロベツを代表するエゾカンゾウをはじめ、100種類以上の花々が咲きほこります。オオヒシクイやオオワシといった渡り鳥も多く飛来する、生き物の宝庫でもあります。
湿原には木道が整備されており、大自然のただ中を、静かに歩いてめぐることができます。
礼文島 れぶんとう
礼文島は、日本最北端に位置する離島です。高山植物が海抜0メートルの場所から自生していることから「花の浮島」とも呼ばれています。
礼文島だけに咲くレブンアツモリソウやレブンウスユキソウといった、この島でしか出会えない貴重な花々も見られます。
島にはトレッキングコースが充実しており、歩くことでしか出会えない絶景がたくさんあります。
特別な気候によって育まれた花々と、断崖絶壁の続く海岸線が織りなす景色は、他の場所では味わえない、礼文島ならではの魅力です。
澄海岬 すかいみさき
澄海岬は、礼文島の北西部にある景勝地です。名前のとおり、海の底まで見えそうなほど澄んだコバルトブルーの海が広がり「礼文で最も美しい海」とも言われています。
弧を描くように広がる湾と、切り立った断崖が織りなす景色は、礼文島観光を代表する1枚として、多くの写真やポスターに使われています。
夏になると、入り江のまわりをエゾカンゾウやエゾスカシユリといった高山植物が彩り、青い海との美しいコントラストを作り出します。
太陽の光の当たり方によっては、海の色が翡翠のような色合いに変わる「礼文ブルー」と呼ばれる景色を見られることもあります。
スコトン岬 すことんみさき
スコトン岬は、礼文島の最北端にある岬です。かつては宗谷岬と、日本最北の座を競い合った歴史を持つ場所でもあります。
展望台に立つと、まず目に飛びこんでくるのが、およそ1キロメートル先に浮かぶ無人島、トド島の姿です。
まわりを取りかこむ紺碧の海は、冬になると流氷が押し寄せる厳しい環境になりますが、晴れた日には、はるか100キロメートル先にあるサハリンの島影を見わたすことができます。
荒々しい断崖から日本海を一望できるこの場所は、北の果てにたどり着いたという実感を、五感すべてで味わえる特別な地です。
利尻島 りしりとう
利尻島は、日本海に浮かぶ、まるまる1つの山でできたような島です。島の中央にそびえる利尻山を中心に、島全体が独立した山のような形をしています。
利尻昆布の産地としても知られ、良質な昆布やうにといった海の幸が豊富にとれる島です。
海岸から山頂まで、標高差およそ1700メートルを一気に登れるという、世界でも珍しい登山を体験できることも、この島の大きな魅力です。
周囲を海に囲まれているため、島のどこにいても、雄大な利尻山の姿を望むことができます。
利尻山 りしりざん
利尻山は、利尻島の中央にそびえる、標高1721メートルの独立峰です。その美しい円すいの形から「利尻富士」とも呼ばれ、日本百名山の中でも最も北に位置する山として知られています。
アイヌ語で「高い島山」を意味する言葉が、その名前の由来です。
山全体が海の中に浮かんでいるため、海岸から山頂まで一気に登ることができるという、世界的にも珍しい登山を体験できます。
山頂からは、遮るもののない360度の景色が広がり、礼文島や北海道本島までを見わたすことができます。古くから航海の目印とされ、海の安全と豊漁を願う信仰の対象としても、大切にされてきた山です。
オタトマリ沼 おたとまりぬま
オタトマリ沼は、利尻島の南東にある、島でいちばん大きな沼です。周囲はおよそ1キロメートルあり、日本最北限のアカエゾマツの原生林に囲まれています。
沼のまわりには遊歩道が整備されており、20分ほどで一周することができます。
この沼の最大の見どころは、水面に映る逆さ利尻富士です。風のない静かな日には、鏡のような水面に利尻山の姿がくっきりと映りこみ、まるで絵葉書のような美しい景色を作り出します。
6月から7月にかけては、沼のまわりにカキツバタが咲きほこり、より一層彩り豊かな景色を楽しめます。
姫沼 ひめぬま
姫沼は、利尻山の北側、標高およそ130メートルの場所にある沼です。大正時代に姫鱒を放流したことから、この名前が付けられました。
オタトマリ沼と同じく、水面に映る逆さ利尻富士の美しさで知られ、島でも指折りの絶景と言われています。
沼のまわりには、エゾマツやトドマツの原生林の中を歩く、約1キロメートルの遊歩道が整備されています。
手軽な散策コースとして親しまれており、静かな水面と深い緑につつまれながら、利尻島ならではの自然をゆったりと味わうことができます。
道東エリアの観光地紹介
道東には、世界に誇る自然遺産と、神秘的な湖の数々が広がっています。まずは前半の5か所をご紹介します。
知床半島 しれとこはんとう
知床半島は、北海道の北東部に位置する半島です。標高1000メートルを超える険しい山々と、切り立った海岸の崖、そして湿原や湖沼が織りなす景観を持ち、2005年には日本で3例目となる世界自然遺産に登録されました。
この土地の最大の特徴は、海から陸、そして山へとつながる、奇跡的なバランスで保たれた独自の生態系です。
冬の海を白くうめつくす流氷は、豊かな栄養を運び、その恵みを受けて鮭が育ちます。川をのぼる鮭を、ヒグマやシマフクロウが食べることで、その命は森の土へと還っていきます。
まさに、命がめぐる巨大な聖域と呼ぶにふさわしい場所です。知床五湖の鏡のような水面や、力強く流れ落ちるオシンコシンの滝など、知床八景と呼ばれる絶景をめぐる旅は、日常を忘れさせてくれる感動を与えてくれます。
納沙布岬 のさっぷみさき
納沙布岬は、離島を除けば日本の本土で最も東にある岬です。根室半島の先端に位置し、海の向こうには、歯舞群島や国後島といった北方領土を望むことができます。
歯舞群島の貝殻島までは、わずか3.7キロメートルという近さで、天気が良ければ肉眼でもその姿を見ることができます。
岬には、1872年に建てられた納沙布岬灯台があります。これは北海道で最初の洋式灯台であり、日本の灯台50選にも選ばれています。
また、北方領土の返還を願って建てられた「四島のかけはし」というシンボル像もあり、朝日が昇る時間帯には、その巨大なアーチ越しに差しこむ光が、神々しい景色を作り出します。
日本で最も早い時間帯に朝日が見られる場所の1つとしても知られ、元旦には多くの人が初日の出を目当てに訪れます。
釧路湿原 くしろしつげん
釧路湿原は、釧路川とその支流を抱える、日本最大の湿原です。その広さは268.6平方キロメートルにおよび、東京の都心がすっぽりおさまってしまうほどのスケールです。
国立公園にも指定されており、5つの展望台と6つの遊歩道が整備され、それぞれの場所から違った表情の湿原風景を楽しむことができます。
この湿原は、国の特別天然記念物であるタンチョウをはじめ、たくさんの動植物が暮らす貴重な生息地です。
カヌーで湿原の中をめぐったり、トロッコ列車に乗って車窓から景色を楽しんだりと、四季を通じてさまざまな体験ができます。
冬には、雪の中で優雅に舞うタンチョウの姿を見られることもあり、多くの人の心をとらえています。
阿寒湖 あかんこ
阿寒湖は、火山の活動によってできた、雄大なカルデラ湖です。世界でも珍しい、大きな球状のマリモが育つ、唯一の生息地として知られています。
このマリモは、国の特別天然記念物にも指定されており、ラムサール条約にも登録されています。
湖のまわりには原生林が広がり、遊覧船に乗れば、静かな水面と緑豊かな山々の景色をゆったりと眺めることができます。
湖畔にはアイヌの人々が暮らす集落もあり、伝統的な文化や踊りに触れられることも、阿寒湖ならではの魅力です。カヌーでの散策や、早朝の森を歩くツアーなど、大自然を全身で感じる体験も充実しています。
摩周湖 ましゅうこ
摩周湖は、世界でもトップクラスの透明度を誇るカルデラ湖です。アイヌ語で「カムイトー」、つまり神の湖と呼ばれ、古くから神秘的な存在として崇められてきました。
湖には流れこむ川がないため、よけいな養分が入らず、不純物がほとんどない、澄みきった水を保っています。
風のない日には、深く吸いこまれるような青色が湖面に広がり、この色は「摩周ブルー」と呼ばれています。
湖の周囲は切り立った崖になっており、湖面まで下りることはできません。だからこそ、人を寄せつけない神秘的な美しさが、今も守られています。
霧に包まれることも多く、その幻想的な姿から「霧の摩周湖」という愛称でも親しまれています。
屈斜路湖 くっしゃろこ
屈斜路湖は、日本最大のカルデラ湖です。屈斜路カルデラは、東西26キロメートル、南北20キロメートルにおよぶ、日本で最も大きいカルデラで、この巨大なくぼ地に水がたまってできた湖が屈斜路湖です。
世界で見ても、インドネシアのトバ湖に次ぐ大きさを誇ります。
湖の水は、コバルトブルーに輝く美しさで知られ、水源の8割が湧き水だと言われています。
湖畔には、砂浜を掘るだけで温泉が湧き出てくる「砂湯」という珍しい場所があり、自分だけの露天風呂を作って楽しむことができます。
冬には湖面が全面結氷し、氷点下20度を下回ることもある厳しい寒さの中、湖にオオハクチョウが飛来する姿も見られます。
未確認生物「クッシー」の目撃談が語りつがれていることでも知られ、神秘的な雰囲気が漂う湖です。
美幌峠 びほろとうげ
美幌峠は、屈斜路湖の西側にある峠です。北海道でも有数の絶景ドライブルートとして知られ、峠の展望台からは、屈斜路湖の全景を見わたすことができます。
日本最大のカルデラ湖を、その外側からまるごと眺められるこの景色は、他ではなかなか味わえないスケールを持っています。
峠を通る道は、雄大な丘陵地帯を貫くように続いており、車を走らせているだけで、北海道らしい広々とした景色を存分に味わうことができます。
天気の良い日には、遠くの山々まで見わたせる、道東を代表する眺望スポットです。
川湯温泉 かわゆおんせん
川湯温泉は、阿寒摩周国立公園にある温泉地です。硫黄山から流れこむ、強い酸性の湯が特徴で、全国でも屈指の酸性泉として知られています。
硫黄山は、アイヌ語で裸の山を意味するアトサヌプリとも呼ばれる活火山で、赤茶けた山肌から、今も白い煙が立ちのぼり続けています。
温泉街から硫黄山までは、つつじヶ原自然探勝路と呼ばれる遊歩道が整備されており、7月上旬にはエゾイソツツジの花が見ごろを迎えます。
強い酸性の湯は殺菌作用が高く、幻想的な冬景色とともに、旅の疲れをじっくりといやしてくれる温泉地です。
サロマ湖 さろまこ
サロマ湖は、北海道でいちばん大きく、日本でも3番目の広さを誇る湖です。
オホーツク海と、細長い砂州によって隔てられた汽水湖であり、海水が流れこむ湖としては日本最大の規模を持っています。
その深く澄んだ青色は「サロマンブルー」と呼ばれ、夕暮れどきには、空と湖が一体となるような美しい景色が広がります。
湖の中央にある幌岩山の山頂には展望台があり、サロマ湖の端から端まで、そしてオホーツク海や知床連山までを一望できます。
オホーツク海のミネラル分を含んだ豊かな水質を生かし、ホタテの養殖がさかんに行われていることでも知られ、サロマ湖はホタテ養殖発祥の地でもあります。
天都山 てんとざん
天都山は、網走市街地の南西にある、標高207メートルの山です。その眺めのすばらしさから「まるで天の都にいるようだ」と称され、この名前がつけられました。1938年には、国の名勝にも指定されています。
山頂の展望台からは、網走湖、能取湖、そしてオホーツク海と知床連山までを360度見わたせる、壮大なパノラマが広がります。
山頂にあるオホーツク流氷館では、マイナス15度の世界で、本物の流氷に触れる体験ができ、冬の厳しさと美しさを、季節を問わず味わうことができます。
春には、山全体が桜につつまれる、網走を代表する花見の名所としても親しまれています。
国立公園
北海道には、6つもの国立公園があります。これほど多くの国立公園が集まっている都道府県は、日本中を見わたしても他にありません。
火山が作り出したカルデラ湖、日本最大の湿原、そして海に浮かぶ独立峰まで、それぞれの国立公園が、まったく違うスケールの自然を見せてくれます。ここでは、北海道にある6つの国立公園を、1つずつご紹介します。
利尻礼文サロベツ国立公園 りしりれぶんさろべつこくりつこうえん
利尻礼文サロベツ国立公園は、日本で最も北にある国立公園です。
海に浮かぶ独立峰の利尻山、この島でしか出会えない花々が咲く礼文島、そして日本最大級の高層湿原であるサロベツ原野という、変化に富んだ景観が特徴です。
この一帯には、渡り鳥が羽を休める中継地としての役割もあり、めったに見られない野鳥の姿が確認されることもあります。
海と山と湿原が近い距離で共存するこの公園は、道北の自然のすべてがぎゅっと詰まった場所だと言えます。
知床国立公園 しれとここくりつこうえん
知床国立公園は、北海道で唯一の世界自然遺産に登録されている国立公園です。
標高1,500メートル級の険しい山々と、切り立った海岸の崖、そして湿原や湖沼が織りなす景観を持ち、人を寄せつけない原始の面影を、今も色濃く残しています。
知床五湖や流氷、ヒグマやオオワシといった野生動物、そして温泉や滝まで、自然の力強さとそのつながりの深さを、肌で感じられる場所です。
早くから国立公園としての指定を受け、地元の人たちの協力のもとで大切に守られてきた、世界に誇れる自然がここにあります。
阿寒摩周国立公園 あかんましゅうこくりつこうえん
阿寒摩周国立公園は、北海道の中でも最も歴史の古い国立公園の1つです。
阿寒、屈斜路、摩周という3つのカルデラ地形を基盤としており、火山と湖が近い範囲でいくつも隣りあっているという、全国的にも珍しい地形を持っています。
公園の大部分は、亜寒帯の針葉樹林におおわれ、国立公園の中でも特に原始的な姿を保っています。
世界一とも言われる透明度を誇る摩周湖、国内で唯一の球状マリモが育つ阿寒湖、日本最大のカルデラ湖である屈斜路湖と、3つの個性豊かな湖を、1つの公園の中でめぐることができます。
釧路湿原国立公園 くしろしつげんこくりつこうえん
釧路湿原国立公園は、釧路川とその支流を抱える、日本最大の湿原を中心とした国立公園です。
その広さは268.6平方キロメートルにおよび、5つの展望台と6つの遊歩道が整備されています。
国の特別天然記念物であるタンチョウをはじめ、たくさんの動植物が暮らす、生き物の宝庫です。
カヌーでの探検や、トロッコ列車での車窓観光など、湿原の中に自分から入りこんで自然を体感できることも、この国立公園ならではの魅力です。
大雪山国立公園 だいせつざんこくりつこうえん
大雪山国立公園は、北海道で最も高い山である旭岳をはじめ、大雪連峰、十勝連峰、石狩山群など、まさに「北海道の屋根」と呼ぶにふさわしい、広大な山岳地帯を持つ国立公園です。
北海道の国立公園の中でも最大の面積を誇ります。
柱状節理の断崖が続く層雲峡や、天然の湖である然別湖など、優れた景勝地が数多くあり、各地に温泉も点在しています。
姿見の池や沼の原といったお花畑では、高山植物が咲きほこる季節ごとの絶景を楽しめます。
支笏洞爺国立公園 しこつとうやこくりつこうえん
支笏洞爺国立公園は「生きた火山の博物館」とも呼ばれる国立公園です。
透明度日本一を誇る支笏湖や、北海道三大カルデラ湖の1つである洞爺湖をはじめ、蝦夷富士と呼ばれる羊蹄山、活火山の樽前山、そして定山渓や豊平峡といった温泉地まで、北海道を象徴する見どころが数多く集まっています。
札幌からのアクセスが良いことも、この国立公園の大きな特徴です。都市の便利さを保ちながら、火山が作り出した雄大な自然を、気軽に楽しむことができます。
日高山脈襟裳十勝国立公園 ひだかさんみゃくえりもとかちこくりつこうえん
日高山脈襟裳十勝国立公園は、南北およそ140キロメートルにおよぶ、日本最大の面積を持つ国立公園です。
氷河が作り出したカール地形や、ナイフの刃のように鋭くとがったナイフリッジといった、貴重な地形を持つ日高山脈から、裾野の森林地帯、そして切り立った海食崖が続く海岸地域まで、変化に富んだ景観がつながっています。
この一帯は、北海道の中でも特に手つかずの自然が残るエリアです。登山道が整備されていない未開の場所も多く、原始的な自然のスケールを強く感じられます。
日本最大の原生流域を持つこの国立公園は、日高山脈が内陸から海までつながる雄大さと、その原生的な姿を保ち続けているという点で、日本を代表する自然の風景地となっています。
名物
札幌雪まつり
札幌雪まつりは、1950年の冬、地元の中学生や高校生たちが、美術教師の指導のもと、大通公園の一角に6基の雪像を作ったことから始まりました。
当時は、戦後の混乱がまだ続いていた時代で、食料をはじめとする生活物資さえ不足していました。
道具を持ちよった学生たちが、試行錯誤しながら作った小さな雪像が、今では世界中から人が集まる一大イベントへと成長したのです。
1953年には、高さ15メートルにおよぶ大雪像が初めて作られました。1955年からは自衛隊も雪像づくりに参加するようになり、1959年には2500人もの人が動員され、大規模な雪像づくりが行われました。
この年、雪まつりは初めてテレビや新聞でも取りあげられ、翌年からは全国、そして世界中から観光客が訪れるようになりました。
今では、大通公園を中心に、精巧な雪像が立ち並ぶ景色を目当てに、毎年多くの外国人観光客が訪れます。
雪像に使われる雪は、不純物のない純白なものが求められ、札幌近郊のさまざまな場所から集められています。
北海道の厳しい冬を、逆に最大の魅力に変えてしまう、この発想の転換こそが、札幌雪まつりが世界的なイベントへと成長した理由だと言えます。
石狩鍋 いしかりなべ
石狩鍋は、石狩市を流れる石狩川の河口で生まれた郷土料理です。この地域では、昔からサケ漁がとてもさかんに行われてきました。
サケが大漁になったとき、漁師たちがそのごほうびとして、獲れたての新鮮なサケをぶつ切りにし、鍋にして食べたことが始まりだと言われています。
冷えきった体を、あたたかい鍋で芯からあたためる。そんな漁師たちの知恵から生まれた料理が、そのまま地域の名前を付けられて、今に伝えられているのです。
生のサケと、大根やじゃがいも、にんじんといった野菜を、みそ仕立てのだしでじっくりと煮こむのが、石狩鍋の特徴です。
バターを加えることもあり、コクのある味わいが北海道の厳しい寒さにぴったりの、体の芯から温まる料理です。北海道を訪れた際に、ぜひ味わっていただきたい、代表的な郷土の味です。
三平汁 さんぺいじる
三平汁も、石狩鍋と同じくサケを使った、北海道の郷土料理です。江戸時代の終わりごろにはすでに食べられていたとされ、200年以上もの歴史を持つ、とても古い料理です。
名前の由来には諸説あり、松前藩の藩主が狩りに出た際、斉藤三平という漁師の家で振る舞われた汁をたいへん気に入ったことから名付けられたという説などが伝えられています。
三平汁は、塩漬けにした鮭やにしんを、大根や人参といった野菜と一緒に煮こみ、魚から出る塩分だけで味を付けるのが特徴です。
生のサケを使い、みそ仕立てで味付けする石狩鍋とは、この点が大きく違います。使う魚は地域によってさまざまで、道央や道東では塩ザケ、道北では塩ダラが使われることもあります。
塩漬けの魚から出るうまみが、じんわりと染みだした汁は、昔ながらの保存の知恵と、北海道の厳しい冬を生きぬいてきた人々の暮らしを、今に伝えてくれる味わいです。
北海道を訪れる外国人観光客の国籍・傾向
北海道を訪れる外国人観光客の数字を見てみると、その勢いには目をみはるものがあります。
2025年、北海道内の外国人延べ宿泊者数は1,281万人にのぼり、前の年から24.3%も増加しました。
これは2年連続の過去最多です。円安の追い風と、飛行機の便数が増えたことが、この大きな伸びを後押ししています。
北海道に訪れる外国人観光客の国籍を見ると、韓国、台湾、中国の3つの国と地域だけで、全体のおよそ7割をしめています。
ただし、それぞれの国のお客さまが求めているものは、まったく違います。
韓国からのお客さまは、新千歳空港への直行便が多いことを背景に、週末を使った短い滞在で、雪をたっぷり楽しむ旅を好む傾向があります。
台湾からのお客さまは、家族連れやリピーターが多く、季節を問わず1年を通して北海道を訪れるという特徴があります。
中国からのお客さまは、団体旅行から個人旅行へという流れが戻りつつあり、単価の高い消費をする傾向が強まっています。
さらに、香港やタイ、シンガポールといった東南アジアからのお客さまも、近年伸び率が高まっています。
欧米やオーストラリアからのお客さまは、ニセコを中心に、長期滞在をしながらスキーやスノーボードを楽しむという、独自の文化を作り上げています。
同じ外国人観光客と言っても、どこの国から来るかによって、検索の仕方も、予約の仕方も、滞在の目的も、まったく異なるのです。
もう1つ、北海道ならではの特徴があります。それは、観光客の数が冬に大きく集中するということです。
雪と、パウダースノーと呼ばれる質の良い雪を目当てに、世界中からスキーヤーやスノーボーダーが訪れます。
この冬への集中は、北海道の大きな強みであると同時に、季節による差をどう埋めていくかという、事業者にとっての課題でもあります。
訪日外国人1人あたりの旅行支出も、2026年の1月から3月の期間で、平均約22万1千円と推計されています。
北海道は、日本の中でも特に、外国人観光客からお金を使ってもらいやすい地域だと言えます。
この大きな伸びしろを、それぞれの国のお客さまの特徴に合わせて、どう受けとめていくかが、これからの北海道の事業者に求められています。
事業者が知っておきたい北海道特有の受け入れポイント
ここまで見てきた北海道の観光客の傾向をふまえて、実際の受け入れでどんな工夫ができるのかを、具体的にお伝えします。
まず意識したいのは、国籍によってお客さまが求めるものがまったく違うということです。
韓国からのお客さまは、週末を使った短い滞在でスノー体験を楽しむ傾向が強く、スピーディーで効率の良い案内が喜ばれます。
台湾からのお客さまは、季節を問わずリピーターとして訪れることが多く、前回とは違う体験や、地元の人しか知らないような場所を求める傾向があります。
中国からのお客さまは、個人旅行が増え、単価の高い消費をする傾向が強まっているため、上質なサービスや特別感のある体験が響きやすくなっています。
欧米やオーストラリアからのお客さまは、長期滞在をしながらその土地の文化そのものを味わいたいという意識が強く、丁寧な説明や、体験型のコンテンツが好まれます。
すべてのお客さまに同じ対応をするのではなく、国や地域ごとの傾向を知ったうえで、サービスの見せ方を変えていくことが、これからの北海道の事業者には欠かせません。
次に大きな課題となるのが、冬に観光客が集中しやすいという季節の偏りです。
雪を目当てにした観光客でにぎわう冬に対して、春から秋にかけては、花畑や湖、国立公園といった別の魅力を、いかにしっかり発信できるかが問われます。
富良野のラベンダーや、大雪山の紅葉、知床の流氷が去ったあとの新緑など、季節ごとの北海道の魅力を、それぞれの時期に合わせて丁寧に伝えていくことが、年間を通じたお客さまの確保につながります。
もう1つ、北海道ならではの課題が、移動にかかる時間の長さです。
道北・道南・道央・道東と、それぞれのエリアが遠く離れているため、1つの旅の中で複数のエリアをめぐるのは、簡単なことではありません。
だからこそ、自分のエリアの近くにある観光地と組み合わせた、モデルコースの提案が、お客さまにとって大きな助けになります。
例えば道東であれば、知床と釧路湿原、摩周湖をつなぐルートを提案するといった工夫が、滞在の満足度を大きく高めてくれます。
最後に、北海道の食文化を生かす視点も大切です。石狩鍋や三平汁といった郷土料理、新鮮な海の幸、濃厚な乳製品は、外国人観光客にとって大きな魅力です。
ただおいしいというだけでなく、その料理がどんな歴史や暮らしから生まれたのかというストーリーを添えて伝えることで、料理そのものが、忘れられない旅の思い出に変わります。
北海道の観光地で使える補助金・支援制度
インバウンド対応を進めるには、費用がかかります。ここでは、北海道の事業者が活用できる、代表的な補助金や支援制度をご紹介します。
補助金の内容や金額は毎年見直されるため、実際に申請する際は、必ず最新の情報を公式の窓口で確認してください。
訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業費補助金
これは、観光庁が用意している全国向けの補助金です。宿泊施設向けのインバウンド対応、バリアフリー分野と、飲食店や体験施設にも対応できるストレスフリー分野の2つに分かれています。
宿泊施設向けの分野は上限500万円、補助率は3分の2です。飲食や体験施設向けの分野は上限150万円で、補助率は3分の2から4分の3となっています。
対象になる費用の幅はとても広く、多言語のメニューやアレルギー表示の作成、多言語での案内表示、Wi-Fiの整備、キャッシュレス決済端末の導入などが含まれます。
栃木県のFUN! FAN! TOCHIGIと同じように、外国人観光客が快適に過ごせる環境を整えるための費用を、幅広く支援してくれる制度です(2026年7月時点の情報のため、内容は変わる可能性があります)。
地域観光資源のコンテンツ化促進事業
こちらも観光庁による全国向けの支援制度です。
特定の季節や地域に観光客が集中してしまう課題を解消するため、農業体験や漁業体験、温泉宿でのアクティビティなど、訪日外国人向けの新しい体験コンテンツを作る費用を支援してくれます。
プロモーション用の素材制作や、ガイドの育成、旅行素材のデジタル整備といった費用も対象になります。
北海道は、冬に観光客が集中しやすいという課題を抱えています。
この補助金をうまく活用すれば、夏や秋の北海道ならではの体験コンテンツを新しく作り、年間を通じたお客さまの確保につなげることができます(2026年7月時点の情報のため、内容は変わる可能性があります)。
自治体独自の補助金
北海道内の各自治体でも、独自の補助金を用意しています。例えば札幌市では、観光業の高付加価値化を目的とした補助金があり、補助率は2分の1、上限は500万円です。
札幌ならではの資源や体験を生かした観光コンテンツの開発、インバウンド向けの高価格帯なツアーやプレミアムな宿泊プランの開発などが対象になります。
このほかにも、宿泊施設の事務負担を軽くするための補助金など、市町村ごとに、その土地の課題に合わせた補助金が用意されていることがあります。
事業を営んでいる市町村の商工課や観光課に問い合わせてみることをおすすめします(2026年7月時点の情報のため、内容は変わる可能性があります)。
相談窓口の活用も大切です
補助金は種類が多く、条件も複雑です。どの補助金が自分の事業に合っているのか、判断に迷うことも多いはずです。
そんなときは、商工会や商工会議所、そして中小企業庁が認定する「よろず支援拠点」といった、無料で相談できる窓口を頼るのがおすすめです。
北海道には、世界自然遺産や6つの国立公園、そして雪まつりのような独自のイベントまで、他の都道府県にはないスケールの観光資源があります。
こうした補助金や支援制度を上手に活用しながら、それぞれの事業者が、外国人観光客を迎える準備を、着実に整えていくことが、これからの北海道の観光をさらに大きく育てていく力になります。
多様な自然と文化が、1つの都道府県の中に共存している場所は、世界を見わたしてもそう多くはありません
北海道は、道北・道南・道央・道東という4つのエリアが、それぞれまったく違う魅力を持つ、日本でも類を見ないスケールの観光地です。
日本最北の宗谷岬や利尻島、世界自然遺産の知床、透明度日本一の摩周湖、雪と光がいろどる札幌雪まつり。これほど多様な自然と文化が、1つの都道府県の中に共存している場所は、世界を見わたしてもそう多くはありません。
数字が示す通り、北海道の外国人延べ宿泊者数は過去最多を更新し続けており、韓国・台湾・中国というアジアの主要な市場に加えて、東南アジアや欧米豪からのお客さまも着実に増えています。
それぞれの国のお客さまが求めるものを理解し、冬に偏りがちな観光需要を、季節を通じてどう分散させていくかが、これからの北海道の大きな鍵になります。
事業者にとって大切なのは、国籍ごとの傾向をふまえたサービスの工夫、エリアをまたいだモデルコースの提案、そして石狩鍋や三平汁といった郷土料理に込められたストーリーを丁寧に伝えていくことです。
訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業費補助金や、各自治体独自の支援制度をうまく活用すれば、費用の負担を抑えながら、その準備を進めることができます。
北海道が持つ圧倒的な自然と文化の豊かさに、事業者1人ひとりの丁寧な受け入れの工夫が積み重なったとき、北海道はさらに多くの外国人観光客に選ばれる場所になっていくはずです。


