デジタル化・AI導入補助金の申請手順|インバウンド対応のITツール導入に使う方法

ITツールを導入したいけど費用が心配、そんなときに使える補助金があります

翻訳デバイスを導入してみたい。多言語に対応したレジに変えたい。外国人のお客様が使いやすい予約システムを入れたい。

でもどれも値段を調べてみると、思ったより高くて手が出しにくい。そう感じている経営者の方は多いのではないでしょうか。

インバウンド対応に必要なITツールは、確かに安い買い物ではありません。

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翻訳デバイスは1台3万円前後、多言語対応のPOSレジは月額数千円から数万円、予約管理システムも月額費用がかかります。複数のツールを一度に揃えようとすると、まとまった費用が必要になります。

しかし、こうした費用の一部を国が出してくれる制度があります。それがデジタル化・AI導入補助金です。

以前は「IT導入補助金」という名前でしたが、2026年度から名前が変わりました。

中身としては、お店や会社がITツールやAIを使ったサービスを導入するときに、費用の一部を国が補助してくれる制度です。

例えば最大450万円の補助が受けられるプランもあり、補助率は費用の2分の1から3分の2程度が目安です。

つまり100万円のITツールを導入する場合、50万円から67万円程度を補助金でまかなえる可能性があるということです。

自分で払う金額が大幅に減るため、「費用が心配で踏み出せなかった」という状況が変わるかもしれません。

この補助金を使うためには、決められた手順で申請をする必要があります。手順がいくつかあるため、最初は難しく感じるかもしれません。

でも一つずつ確認していけば、決して複雑なものではありません。まずどんな制度なのかを知るところから始めましょう。

デジタル化・AI導入補助金とはどんな制度か

インバウンド対応に必要なITツールを導入するときに使える、デジタル化・AI導入補助金の基本的な内容を確認しておきましょう。

本記事は2026年6月時点の情報をもとにしていますが、制度の内容は変わることがあるため、申請前に必ず公式サイトで最新情報を確認してください。

どんな補助金なのか

デジタル化・AI導入補助金は、中小企業や小規模なお店がITツールを導入するときに、費用の一部を国が出してくれる制度です。

2025年まで「IT導入補助金」という名前でしたが、2026年度から名前が変わりました。名前は変わりましたが、基本的な仕組みは引き継がれています。

この補助金には「通常枠」「インボイス枠」「セキュリティ対策推進枠」など複数の申請の種類があり、導入したいツールや目的によってどれを使うかが変わります。

インバウンド対応のITツールを導入したい場合は、主に通常枠を使うことになります。

申請は通年で受け付けており、だいたい1〜2ヶ月に1回のペースで締め切りが設定されています。

予算の上限に達した枠から早く終わってしまうことがあるため、導入したいツールが決まったら早めに動き出すことが大切です。

インバウンド対応のどんなツールに使えるか

この補助金で補助されるのは、あらかじめ事務局に登録されたITツールだけです。どんなツールでも自由に選べるわけではない点が大切なポイントです。

登録されているツールは、補助金の公式サイトにある「ITツール検索」から確認できます。

インバウンド対応に関連するツールとしては、多言語対応のPOSレジソフト・予約管理システム・キャッシュレス決済サービス・顧客管理ソフトなどが対象になる場合があります。

2026年度からはAI機能を持つツールも補助対象として明確に位置づけられており、翻訳AI機能を持つシステムなども対象になる可能性があります。

ただし注意が必要なのは、翻訳デバイスのような単体のハードウェア(機械・端末)は、原則としてこの補助金の対象外という点です。

ソフトウェアやクラウドサービスが主な対象であることを覚えておきましょう。

いくらもらえるのか

補助額は1事業者あたり最大450万円で、補助率は類型や事業者の規模によって異なります。

基本的な補助率は1/2ですが、小規模事業者は賃上げなど一定の条件を満たすことで4/5まで引き上げることができます。

わかりやすく例を挙げると、100万円のソフトウェアを導入する場合、通常の補助率1/2なら50万円が補助され、自分で払う金額は50万円になります。

小規模事業者で補助率4/5の場合は80万円が補助され、自己負担は20万円になります。

ただしこれはあくまでも目安です。導入するツールのプロセス数(機能の数)や条件によって補助率と補助額が変わるため、詳しくは公式サイトか、後ほど説明するIT導入支援事業者に確認することをお勧めします。

申請する前に確認すること

申請の手順を進める前に、いくつか確認しておくべきことがあります。事前に準備しておくことで、申請がスムーズに進みます。

対象になるお店の条件

デジタル化・AI導入補助金を申請できるのは、中小企業や小規模事業者です。飲食店・小売店・宿泊施設などの個人事業主も対象になります。

規模の目安として、飲食業・小売業・宿泊業などのサービス業の場合、資本金が5,000万円以下または従業員が100人以下のお店が対象になります。

ただし次のような場合は対象外になることがあります。

大きな会社が出資している子会社や関連会社・申請書類に虚偽の内容を書いた事業者・過去にこの補助金で採択を受けてから12ヶ月以内に再び申請しようとしている場合などです。

自分のお店が対象かどうかわからない場合は、後ほど説明するIT導入支援事業者か、商工会・商工会議所に相談してみてください。

対象になるITツールの確認方法

先ほどお伝えした通り、この補助金で補助されるのは事務局に事前登録されたITツールだけです。

自分が導入したいツールが対象かどうかを確認するには、補助金の公式サイトにある「ITツール・IT導入支援事業者検索」を使います。

サイトにアクセスして、業種や機能のキーワードで検索すると、対象のツールと、そのツールを提供している会社(IT導入支援事業者)が一覧で表示されます。

インバウンド対応に関わるキーワードで検索してみて、自分のお店が使いたいツールが登録されているかを確認しましょう。登録されていないツールはこの補助金では使えません。

申請に必要なアカウントの準備

申請はすべてインターネット上で行います。申請を始める前に、2つのアカウントを準備しておく必要があります。

一つ目はGビズIDです。国の電子申請システムにログインするためのアカウントで、法人や個人事業主が国の補助金を申請するときに使います。

取得の申し込みをしてから実際に使えるようになるまで、書類の郵送などがあるため1〜2週間程度かかることがあります。申請を始める前に早めに取得の手続きをしておくことをお勧めします。

二つ目はSECURITY ACTION(セキュリティアクション)の宣言です。自社のセキュリティ対策に取り組むことを宣言するものです。

ネット上で簡単に宣言できて費用もかかりません。申請の条件として必要なので、GビズIDの取得と合わせて早めに行っておきましょう。

また2026年度から新たに「省力化ナビ」という診断ツールを使った事前診断が必須になりました。

自分のお店の業務のどこに改善の余地があるかをチェックするもので、補助金の公式サイトから行えます。申請の前に必ず完了させておいてください。

申請の手順をステップごとに説明する

準備が整ったら、実際に申請の手順を進めていきます。6つのステップに分けて説明します。

ステップ1|IT導入支援事業者を選ぶ

この補助金は、自分だけで申請することができません。必ず事務局に登録されたIT導入支援事業者という会社と一緒に申請する仕組みになっています。

IT導入支援事業者とは、補助金の対象になるITツールを提供している会社のことで、申請の手続きをサポートしてくれます。

補助金の公式サイトにある「ITツール・IT導入支援事業者検索」から、導入したいツールを提供している会社を探して連絡を取りましょう。

複数の会社に問い合わせて、サポートの内容や対応のよさを比べてから選ぶことをお勧めします。

IT導入支援事業者が決まったら、自分のお店の状況や困っていること・導入したいツールについて詳しく相談しましょう。補助金申請に必要な情報や書類についても案内してもらえます。

ステップ2|導入するITツールを決める

IT導入支援事業者と相談しながら、実際に導入するITツールを決めます。このとき大切なのは、補助金の対象として事務局に登録されているツールの中から選ぶという点です。

インバウンド対応の目的に合ったツールを選ぶことが大切です。多言語対応のPOSレジソフトが目的なのか、予約管理システムが必要なのか、キャッシュレス決済を整えたいのかによって、選ぶツールが変わります。

IT導入支援事業者に「インバウンド対応に使いたい」と伝えると、適したツールを提案してもらいやすくなります。

ステップ3|GビズIDを取得する

まだGビズIDを取得していない場合は、このタイミングで取得の手続きを進めます。GビズIDの公式サイトから申し込みをして、書類を郵送するなどの手続きを行います。

取得まで1〜2週間かかることがあるため、できるだけ早めに動き出しましょう。

あわせてSECURITY ACTIONの宣言と省力化ナビの診断も、まだ済んでいなければこの段階で完了させておきましょう。これらが揃っていないと申請画面に進めません。

ステップ4|交付申請をする

GビズIDなどの準備が整ったら、IT導入支援事業者と一緒に交付申請を行います。

申請はすべてインターネット上で行い、補助金の公式サイトの申請画面からログインして必要な情報を入力していきます。

ここで特に大切なのが、交付申請が完了して「交付決定」の通知を受け取る前に、ITツールの発注や契約・支払いをしてしまわないことです。

交付決定の前に動いてしまうと、補助金の対象外になってしまい、費用をすべて自分で負担することになります。必ず交付決定の通知を受けてから次のステップに進んでください。

申請から交付決定までは、数週間から1ヶ月程度かかることが一般的です。締め切りのスケジュールに合わせて、余裕を持って申請することをお勧めします。

ステップ5|ITツールを導入して実績報告をする

交付決定の通知を受け取ったら、はじめてITツールの発注・契約・支払いができます。ツールの導入が完了したら、IT導入支援事業者と一緒に実績報告を提出します。

実績報告には、ツールを導入したことを示す書類(契約書・領収書・納品書など)が必要です。

これらの書類は必ず大切に保管しておいてください。実績報告を提出しないと、補助金は一切振り込まれません。

導入完了から実績報告の提出までに使える期間(事業実施期間)は、交付決定から約6ヶ月です。この期間内にツールの導入と実績報告を完了させる必要があります。

ステップ6|補助金が振り込まれる

実績報告が審査を通ると、補助金の金額が確定して振り込まれます。補助金は後払いの制度のため、まず自分でツールの費用を全額払い、後から補助金が戻ってくるという仕組みです。

振り込まれるまでの期間はケースによって異なりますが、実績報告の提出から数週間から数ヶ月程度かかることがあります。

ツールの費用を先に払う必要があるため、資金の流れを事前に確認しておくことが大切です。

なおツールを導入した後も、最長3年間にわたって事業計画の成果を報告する義務があります。目標に届かなかった場合は、補助金の一部または全額を返す必要が出てくることもあります。

よくある質問

デジタル化・AI導入補助金の申請について、よく寄せられる疑問をまとめました。

自分で申請しなければいけませんか?

この補助金はIT導入支援事業者と一緒に申請する仕組みのため、完全に自分だけで手続きを進めることはできません。IT導入支援事業者がサポートしながら一緒に申請を行う形になります。

ただし申請に必要な情報の入力や書類の準備は、自分のお店の状況を一番よく知っている自分自身が主体的に関わる必要があります。

IT導入支援事業者に「全部お任せ」にしてしまうのではなく、自分でも内容を確認しながら進めることが大切です。

申請の手続き全体が不安な場合は、商工会・商工会議所やよろず支援拠点に相談することもできます。

補助金の申請を専門にしている中小企業診断士や行政書士に依頼するという方法もありますが、その場合は別途費用が発生します。

まずはIT導入支援事業者に相談して、どこまでサポートしてもらえるかを確認してみましょう。

申請してから補助金が振り込まれるまでどのくらいかかりますか?

申請してから補助金が振り込まれるまでには、いくつかのステップがあるため、合計でかなりの時間がかかります。

全体の流れを整理すると、申請から交付決定までが数週間から1ヶ月程度、交付決定からITツールの導入・実績報告の提出までが最長6ヶ月、実績報告の審査から補助金の振り込みまでがさらに数週間から数ヶ月、という流れになります。

つまり申請をしてから補助金が実際に手元に届くまで、早くても数ヶ月、場合によっては半年以上かかることがあります。

補助金は後払いの仕組みのため、まず自分でITツールの費用を全額払う必要があります。

資金に余裕がない場合は、日本政策金融公庫などの融資制度と組み合わせて資金を用意する方法も検討してみてください。

採択されなかった場合、費用はかかりますか?

申請が採択されなかった場合でも、補助金の申請自体に費用はかかりません。ただし申請の手続きにかけた時間と手間は戻ってきません。

また不採択になった場合は、次の締め切りのタイミングで再申請することができます。なぜ不採択になったのかを振り返り、申請内容を改善してから再挑戦することが大切です。

注意が必要なのは、採択を見込んで交付決定の前にITツールを発注・購入してしまった場合です。

不採択になったり交付決定前に動いてしまったりすると、補助金は一切もらえず、ツールの費用は全額自己負担になります。必ず交付決定の通知を受け取ってから発注・購入するというルールを守ってください。

補助金申請を専門の業者に依頼していた場合、不採択でも着手金が返ってこないというトラブルも報告されています。依頼する前に、不採択の場合の費用の取り扱いについて必ず確認しておきましょう。

まずIT導入支援事業者に相談することから始める

ここまでデジタル化・AI導入補助金の内容から申請の手順、よくある質問まで解説してきました。最後に全体を振り返ります。

この補助金の3つの大切なポイントを覚えておく

一つ目は、対象になるのは事務局に登録されたITツールだけという点です。自分が使いたいツールが登録されているかどうかを、公式サイトのITツール検索で事前に確認することが必須です。

登録されていないツールは、どれだけ良いものでも補助金の対象になりません。

二つ目は、交付決定の前にITツールを発注・購入してはいけないという点です。

採択されたことを喜んで、交付決定の通知を待たずに動き出してしまうと、補助金が一切もらえなくなります。必ず通知を確認してから次の行動を取るようにしてください。

三つ目は、補助金は後払いという点です。申請してすぐにお金がもらえるわけではなく、ツールを導入して実績報告を提出した後に振り込まれます。

費用を先に自分で払う必要があるため、資金の準備も合わせて考えておくことが大切です。

早めに動き出すことが大切

デジタル化・AI導入補助金は通年で受け付けていますが、予算の上限に達した枠から早く終わってしまいます。

「いつか申請しよう」と思っているうちに、使いたかった枠が終わってしまうことがあります。

導入したいITツールが決まったら、できるだけ早くIT導入支援事業者に連絡を取って、準備を始めることをお勧めします。

またGビズIDの取得には1〜2週間かかることがあるため、補助金を使おうと決めたらまず最初にGビズIDの申し込みを始めることが、スムーズに進めるための近道です。

まずIT導入支援事業者に相談してみよう

申請の手順を読んで「難しそう」と感じた方も、一人で全部やらなければいけないわけではありません。

IT導入支援事業者が申請の手続きをサポートしてくれます。まず補助金の公式サイトのITツール検索で、自分のお店が導入したいツールを提供している会社を探して連絡してみましょう。

インバウンド対応に必要なITツールの費用を補助金でまかなえれば、その分のお金をお店の別のことに使えます。使える制度を正しく理解して、賢く活用していきましょう。

この記事を書いた人

旅行、観光、IT・Webマーケティングの仕事に25年ほど携わってきた40代。現在はインバウンド対応に悩む店舗・宿泊施設の方々に向けて、実際に使えるツールや方法をまとめています。導入コストや使い勝手を含めて丁寧に検証することを心がけています。