秋田県[羽後・うご]を訪れる外国人観光客の国籍を見ると、台湾からのお客さまが最も多く、香港、中国と続いています

秋田県ってどんなところ?基本情報とインバウンドから見た魅力

秋田県と聞いて、何を思い浮かべますか。日本一深い田沢湖の澄んだ水面、勇壮な竿燈まつり、そして人懐っこい表情の秋田犬。

東北地方の日本海側に位置するこの県には、雄大な自然と、素朴で温かい人情が息づいています。

秋田県は、世界自然遺産の白神山地の一部を青森県と共有し、日本一深い湖である田沢湖や、乳頭温泉郷のような秘湯を数多く抱える、自然の恵みにあふれた県です。

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米どころとしても知られ、日本酒の名産地としても、全国から高い評価を受けています。秋田空港からは、台湾との間にチャーター便が運航されることもあり、海外とのつながりも少しずつ広がっています。

正直にお伝えすると、秋田県のインバウンドは、これまで東北の中でも伸び悩んできたという現実があります。

2024年の1月から4月までの延べ宿泊者数を見ると、青森県、岩手県、山形県がいずれも10万人を超える中、秋田県は2万7610人にとどまり、コロナ前と比べても唯一マイナスという状況が続いていました。

けれども、ここに来て、大きな変化の兆しが見え始めています。

2025年3月、秋田県の外国人延べ宿泊者数は、前の年の同じ月と比べて112.8%も増加し、全国でトップの伸び率を記録したのです。

ローカル鉄道を利用する外国人観光客の数が2倍に増えたというデータもあり、これまであまり注目されてこなかった、秋田県ならではの素朴な魅力に、少しずつ光があたり始めていることがうかがえます。

秋田県を訪れる外国人観光客の国籍を見ると、台湾からのお客さまが最も多く、香港、中国と続いています。

秋田空港へのチャーター便の存在が、この傾向を支えています。伸び悩んできたからこそ、これから伸びる余地は大きく残されています。

日本一深い田沢湖の神秘、乳頭温泉郷の素朴な湯治文化、そして竿燈まつりの熱気。こうした秋田県ならではの魅力を、これからどう世界に届けていくかが、大きな鍵になります。

秋田県を代表する自然と景勝地

秋田県には、大地の力を肌で感じられる秘湯や、瑠璃色に輝く神秘の湖、そして世界に誇る原生林まで、心を打つ景色がたくさんあります。まずは前半5か所を、情熱をこめてご紹介します。

八幡平 はちまんたい

八幡平は、秋田県と岩手県にまたがる、標高1000メートルから1600メートルの高原地帯です。

なだらかな山稜には、原生林や高山植物が咲きほこる草原と、火山地形が織りなす景観が広がり、八幡沼をはじめとした数々の池沼や渓谷が、自然の大公園を作り出しています。

この一帯は、玉川温泉、後生掛温泉、ふけの湯温泉、大深温泉、大沼温泉といった、個性豊かな温泉が集まる「八幡平温泉郷」としても知られています。

森林浴と温泉浴を同時に楽しめる、国内外から愛好家が訪れるこの場所は、まさに自然の恵みを全身で味わえる、癒やしのメッカです。

後生掛温泉 ごしょうがけおんせん

後生掛温泉は、八幡平国立公園のただ中、火山の地熱が生み出す湯煙に包まれた、開湯からおよそ300年の歴史を持つ湯治宿です。

「馬で来て 足駄で帰る」という言葉が、古くから言い伝えられてきました。

これは、体の不調を抱えて馬に乗ってやってきた人が、湯治を終えるころには、自分の足でしっかりと歩いて帰れるようになるという、この温泉の効能の高さを物語っています。

総木造りの大浴場では、箱の中に首だけ出して入る「箱蒸し風呂」や、全身にどろを塗る「泥風呂」、体の芯まで温まる「火山風呂」など、実に7種類もの湯を楽しむことができます。

泥火山や大噴煙に囲まれた、まるで異世界のような光景の中で味わう湯治体験は、他ではなかなか出会えない、貴重な思い出になるはずです。

玉川温泉(北投石の岩盤浴) たまがわおんせん

玉川温泉は、焼山の中腹にある、日本一の湧出量を誇る温泉です。1か所からの湧出量は毎分9000リットルにもおよび、pH1.2という強い酸性の泉質は、世界でも珍しいものです。

開湯からおよそ330年、その効能の高さを求めて、国内はもちろん海外からも、多くの人が湯治に訪れます。

この温泉が特別な理由は、地熱で温まった岩盤の上で行う、天然の岩盤浴にあります。

玉川温泉のこの岩盤は、世界でも台湾と日本、南米チリのわずか3か所でしか産出しない、大変珍しい鉱物「北投石」を生み出しています。

この北投石が発するわずかな放射線が、新陳代謝を促す働きを持つと言われ、古くから療養と癒やしの温泉として、名高い存在です。

全国有数の湯治場として、これほど自然のエネルギーを直接感じられる場所は、他にはありません。

白神山地 しらかみさんち

白神山地は、青森県と秋田県にまたがる、世界最大級のブナの原生林です。

人の手がほとんど加わっていない、原始のままの森が広がるこの場所は、1993年に日本で初めての世界自然遺産として登録されました。

秋田県側からは、藤里町の白神山地世界遺産センターを起点に、ブナ林散策を楽しむことができます。

青森県側とは違った角度から、この雄大な森の奥深さに触れられることも、秋田県ならではの魅力です。

木々の葉のすき間から降りそそぐ緑の光と、清らかな水の流れに包まれながら歩けば、はるか昔から変わらぬ、命の営みを肌で感じることができます。

田沢湖(辰子姫) たざわこ

田沢湖は、秋田県仙北市にある、日本で最も深い湖です。周囲およそ20キロメートルのほぼ円形をした湖は、最大水深423.4メートルにもおよび、この深さは東京タワーの高さをも上回るスケールです。

晴れた日には、湖面が瑠璃色に輝き、東北の厳しい冬でも凍ることがないという、数々の神秘に包まれています。

この湖には「たつこ伝説」という、心を打つ物語が語り継がれています。

永遠の若さと美しさを願った娘、辰子が、お告げのままに泉の水を飲んだところ、いつしか大きな龍の姿になり、田沢湖の主として、湖に住み続けることになったという伝説です。

湖畔にたたずむ、黄金色に輝くたつこ像は、この物語を今に伝える、田沢湖のシンボルです。遊覧船に乗って湖上からその姿を眺めれば、辰子が見つめてきたであろう、瑠璃色の水面の美しさを、まるごと味わうことができます。

乳頭温泉郷(黒湯温泉、鶴の湯温泉) にゅうとうおんせんきょう

乳頭温泉郷は、乳頭山のふもとに、7つの一軒宿がひっそりと点在する、秘湯の里です。

時代の歯車が止まったかのような、素朴な湯治風景が今も残り、自然に抱かれながら温泉巡りを楽しみたい人にとって、まさに理想の場所です。

中でも鶴の湯温泉は、乳頭温泉郷の中で最も歴史の古い一軒宿です。マタギと呼ばれる猟師が、傷を癒す鶴を見つけたことから、その名がついたと伝えられています。

1638年には、秋田藩主自らが湯治に訪れたという記録も残る、由緒ある名湯です。茅葺き屋根の本陣と、乳白色に濁った混浴の露天風呂は、まさに秘湯の代名詞と呼ぶにふさわしい風情を漂わせています。

もう1つの名湯である黒湯温泉は、開湯からおよそ340年という歴史を持ち、深いブナ林の中にひっそりとたたずんでいます。

茅葺きや杉皮葺きの宿舎、木造りの湯船が、湯治場として栄えた当時の面影を今に伝えています。それぞれの宿が異なる泉質を持つことも、この温泉郷の大きな魅力です。

「湯めぐり帖」を使えば、複数の宿の湯を巡りながら、違った泉質の湯を、心ゆくまで味わうことができます。

角館(みちのくの小京都) かくのだて

角館は、江戸時代の城下町の姿を、今も色濃く残す町です。武家屋敷が立ち並ぶ「みちのくの小京都」とも呼ばれ、当時の武士の暮らしを、そのままの姿でしのぶことができます。

武家屋敷通りは、東北屈指の桜の名所としても名高く、毎年4月下旬から5月上旬にかけて、およそ400本のしだれ桜が、黒い板塀に降りそそぐように咲きほこります。

桧木内川沿いに続く桜のトンネルもあわせて楽しめば、まるで時代を超えて江戸の情緒に包まれるような、特別な体験ができます。

広い敷地を誇る武家屋敷「青柳家」では、当時の建物を見学しながら、この地ならではの甘味を味わうこともでき、街歩きの合間の、心地よい休憩の時間になります。

樺細工 かばざいく

樺細工は、角館だけに伝わる、山桜の樹皮を使った伝統工芸品です。江戸時代の中ごろ、この地を治めていた佐竹北家が、下級武士の副業として奨励したことから始まりました。

もともとは印籠や眼鏡入れといった、武士の身の回りの品として作られていましたが、明治時代以降は、茶筒やブローチなど、暮らしに寄り添う品々へと、その形を広げていきました。

山桜の樹皮が持つ独特の光沢と、渋みのある深い色合いが、樺細工ならではの美しさです。

長く使い続けるほどに、樹皮の色素が増して、あめ色へと変わっていくことも、この工芸品の大きな魅力です。

角館の職人たちは、樹皮を薄く加工し、コテを使って丁寧に貼りつける、繊細な技術を今も受けついでいます。

日本全国を見わたしても類を見ない、この独自の工芸品は、海外からも高い注目を集めており、有名ブランドの製品にも採用されるほどの実力を持っています。

男鹿半島 おがはんとう

男鹿半島は、秋田県の日本海に突き出た、変化に富んだ海岸線を持つ半島です。

国指定の重要無形民俗文化財である「なまはげ」の里として知られ、荒々しい海岸線と、緑深い山々が織りなす、雄大な景観を持っています。

三方を海に囲まれたこの半島では、新鮮な海の幸を味わえることも大きな魅力です。

石焼料理やきりたんぽ鍋、しょっつる鍋といった、秋田県ならではの郷土料理が、旅の楽しみをいっそう深めてくれます。

入道崎の絶景、寒風山の大パノラマ、そして男鹿温泉郷の湯めぐりと、1つの半島の中に、これほど多彩な魅力が詰めこまれている場所は、そう多くはありません。

入道崎 にゅうどうざき

入道崎は、男鹿半島の最北端、北緯40度線上に位置する、雄大な景勝地です。見わたす限りの緑の芝生と、青い日本海、そして澄みわたる空が織りなすコントラストは、訪れる人の心をとらえてやみません。

白と黒の縞模様が印象的な入道崎灯台は「日本の灯台50選」にも選ばれ、内部を見学することもできます。

灯台のかたわらには、寒風山産の岩石を使った北緯40度線のモニュメントも立っており、この場所がどれほど特別な位置にあるかを実感させてくれます。

「日本の夕陽百選」にも選ばれるほどの美しい夕景も、この地ならではの魅力です。芝生に寝そべって、灯台と海を眺めながら過ごす、穏やかなひとときは、忘れられない旅の思い出になるはずです。

寒風山 かんぷうざん

寒風山は、男鹿半島の中央にそびえる、標高およそ355メートルの火山です。3万年以上前から幾度もの火山活動をくり返し、安山岩の溶岩が積み重なることで、今のなだらかな姿が作り上げられました。

山頂の回転展望台に上れば、13分かけて360度をぐるりと見わたせる、大パノラマが広がります。

秋田市から続く海岸線と鳥海山、なまはげ発祥の地である真山や入道崎、そして世界自然遺産の白神山地まで、四方の景色をまるごと味わうことができます。

3つの火口が今も残る山肌には、溶岩が流れた痕跡もはっきりと見ることができ、大地が生きてきた歴史を、目の前で感じることができます。

男鹿温泉 おがおんせん

男鹿温泉は、男鹿半島の北岸に広がる、1000年以上の歴史を持つといわれる温泉郷です。

かつて坂上田村麻呂が東征の折に発見したと伝えられ、江戸時代から湯治場として、長く栄えてきました。

秋田藩主の佐竹氏や、民俗学の祖とも呼ばれる江戸後期の旅行家、菅江真澄も、この湯に浸かったと伝えられています。

海水と似た成分を含むこの温泉は、肌に付いた塩分が汗の蒸発を防ぎ、体を芯から温めてくれることから「熱の湯」として親しまれています。

豊かな湯量を誇り、宿の半数以上が自家源泉を持っていることも、男鹿温泉ならではの特徴です。

寒風山や入道崎、なまはげにゆかりのある真山神社にも近く、男鹿観光の拠点として、大変便利な立地にあります。

湯上がりには、豪快な石焼料理や、きりたんぽ鍋、しょっつる鍋といった、この土地ならではの郷土料理を味わうこともでき、まさに男鹿の魅力をまるごと満喫できる場所です。

世界遺産の縄文遺跡群 じょうもんいせきぐん

秋田県には「北海道・北東北の縄文遺跡群」の一部として、2021年に世界文化遺産に登録された、2つの貴重な遺跡があります。1つは鹿角市にある大湯環状列石、もう1つは北秋田市にある伊勢堂岱遺跡です。

いずれも縄文時代の人々が、祈りやまつりのために築いた、環状列石と呼ばれるストーンサークルを中心とした遺跡です。

人々の暮らしそのものではなく、命をつなぐための祈りの場が、これほど大規模な形で今に残されていることは、世界的にも大変珍しいことです。

今から4000年ほど前、狩りや漁、採集だけで暮らしていた縄文人たちが、こうした精神的な営みを大切にしていたという事実は、私たちの想像をはるかに超える、豊かな文化の存在を教えてくれます。

地域の人々が長い年月をかけてこの遺跡を守り続けてきたからこそ、今、その価値を世界に伝えることができているのです。

十和田湖 とわだこ

十和田湖は、青森県と秋田県にまたがる、日本でただ1つの二重カルデラ湖です。22万年前から活動を続けた十和田火山が、幾度もの巨大な噴火をくり返し、その中心部が陥没することで、この壮大な湖が作り出されました。

秋田県側からこの十和田湖に向かうと、樹海ラインと呼ばれる、ブナの森を貫く道を通ります。

湖畔には遊覧船の発着場もあり、湖上から眺める外輪山の景色もまた格別です。青森県側とは違った角度から、この神秘の湖に近づくことができるのも、秋田県ならではの楽しみ方です。

発荷峠 はっかとうげ

発荷峠は、十和田湖の南端、秋田県側にある峠です。標高およそ631メートルの場所に立つ発荷峠展望台は、十和田湖を代表する展望スポットとして、多くの観光客に親しまれています。

円形をした展望台からは、眼下に西湖と、入り江が美しい中山半島、その向こうに広がる御倉山、そして正面には十和田カルデラの外輪山が連なり、さらに遠くには八甲田連峰までを見わたすことができます。

5月の山桜、6月の新緑、紅葉に染まる9月から10月、そして雪化粧をまとう冬まで、四季折々に違う美しさを見せてくれる、十和田湖随一の眺望を誇る場所です。

大湯環状列石 おおゆかんじょうれっせき

大湯環状列石は、鹿角市にある、縄文時代後期に築かれた、大規模な祭祀遺跡です。

1931年に発見されたこの遺跡は、東西およそ130メートルの距離をおいて向きあう、万座環状列石と野中堂環状列石という、2つの環状列石から構成されています。

万座環状列石は直径52メートル、野中堂環状列石は直径42メートルという、驚くべき規模を誇ります。

十数個の組石が群をなし、二重の環状に配置され、そのまわりを囲むように、掘立柱建物の跡が見つかっています。

これは、葬送の儀礼などを行うための施設だったと考えられています。出土した土器や土偶からは、当時の人々の祈りとまつりの様子がうかがえ、縄文人たちの精神世界の奥深さを、今に伝えてくれます。

隣接する大湯ストーンサークル館では、こうした出土品を数多く展示しており、この遺跡が持つ価値を、より深く学ぶことができます。

秋田県ならではの祭りと伝統行事

秋田県には、大地を切り開いた人々の営みや、豊作を願う勇壮な祭り、そして年に一度やってくる不思議な神様まで、心を打つ魅力があふれています。

八郎潟 はちろうがた

八郎潟は、かつて琵琶湖に次いで日本第2の広さを誇った、秋田県の湖でした。この湖を干拓し、20年という長い歳月をかけて生まれたのが、今の大潟村です。

周囲52キロメートルの堤防に囲まれ、村のほぼ全域が海抜0メートル以下という、日本でも珍しい人工の大地です。

1964年、6世帯わずか14人でスタートしたこの村は、全国から集まった入植者たちの手によって、日本のモデルとなる農業を作り上げようという理想のもとに育てられてきました。

今では、良質なブランド米「あきたこまち」の一大産地として知られています。

県道沿いに続く「桜と菜の花ロード」では、春になると桜の淡い紅色と菜の花の鮮やかな黄色が織りなす、11キロメートルにおよぶ絶景が広がります。

地平線まで続く広大な田園風景は、人の手によって湖から生まれたとは思えないほどの、雄大なスケールを見せてくれます。

大曲 おおまがり

大曲は、日本三大花火大会の1つに数えられる「大曲の花火」が開催される、秋田県大仙市の地域です。

正式名称は「全国花火競技大会」といい、その歴史は1910年、諏訪神社の祭典の余興として花火が打ち上げられたことに始まります。

当時、東北の花火師たちが一か所に集まって腕を競うことは他に例がなく、画期的な催しでした。

毎年8月最終土曜日に開催されるこの大会では、全国から選ばれた一流の花火師たちが、デザインや色彩、創造性を競いあいます。

昼花火の部では、色煙で空を彩る煙の芸術が披露され、夜花火の部では、音楽にあわせた壮大な花火が夜空を彩ります。

内閣総理大臣賞や経済産業大臣賞も授与される、権威ある大会であり、80万人にもおよぶ観覧客が、日本一の花火師の技を目当てに、秋田の夜空を見上げます。

祭りの竿燈まつり(秋田市、8月、東北三大祭り) かんとうまつり

竿燈まつりは、毎年8月3日から6日までの4日間、秋田市で開催される、東北三大祭りの1つに数えられる伝統行事です。

江戸時代中期に行われていた、無病息災を願う夏の行事が、少しずつ形を変えながら発展し、明かりをともした提灯をいくつも付けた竿を、若者たちが練り歩くという、今の姿になったと伝えられています。

竿燈は、稲穂を、吊るされた提灯は米俵を表しており、豊作への願いがこめられています。

最も大きな「大若」は、長さ12メートル、重さ50キログラム、46個もの提灯を吊るした、大変な重さを持つ竿燈です。

差し手と呼ばれる腕自慢たちが、この重い竿燈を、手のひらや額、肩、腰へと巧みに移しかえながら、絶妙なバランスで操る技は、まさに職人芸と呼ぶにふさわしい迫力です。

「ドッコイショー、ドッコイショ」という力強い掛け声とともに、夜空に何百もの提灯の灯りが揺らめく光景は、見る者の心を強く揺さぶります。

なまはげ(男鹿市、12月と2月、ユネスコ無形文化遺産)

なまはげは、男鹿半島に古くから伝わる、年に一度やってくる来訪神です。

大晦日の晩、集落の青年たちがなまはげに扮し「泣く子はいねがー、怠け者はいねがー」と大声で叫びながら、家々を巡り歩きます。

その語源は、冬に囲炉裏で長く暖をとっていると手足にできる火斑を「なもみ」と呼び、これを剥ぎ取って怠け心を戒める「なもみ剥ぎ」という行いが、少しずつ変化していったものだと伝えられています。

恐ろしい見た目とは裏腹に、なまはげは、怠け心を戒め、無病息災や豊作、豊漁をもたらしてくれる、ありがたい存在です。

なまはげを迎える家では、昔からの作法にのっとって、料理や酒を用意し、丁重にもてなします。

1978年には国の重要無形民俗文化財に指定され、2018年には「来訪神:仮面・仮装の神々」として、ユネスコ無形文化遺産にも登録されました。

男鹿真山伝承館などでは、この不思議な神様との出会いを、1年を通して体験することもできます。

郷土料理のきりたんぽ

きりたんぽは、秋田県北部の鹿角や大館地方で生まれた、この地ならではの郷土料理です。もともとは、山で働く木こりや、狼などを狩るマタギたちが、山の中で食べ残した握り飯をつぶし、木の棒に巻きつけて焼いたことが始まりだと伝えられています。

その名前は、槍の先を守るためにつけるカバーである「たんぽ」に、形が似ていることに由来すると言われています。

鍋に入れるとき、このたんぽを食べやすい大きさに切ることから「きりたんぽ」と呼ばれるようになりました。

日本三大地鶏の1つに数えられる比内地鶏から取った、コクのあるだしに、きりたんぽと、ごぼうやせり、まいたけといった秋田の山の幸をあわせて煮こむ「きりたんぽ鍋」は、新米が収穫される秋から冬にかけて、多くの人に親しまれています。

山で働く人々の知恵から生まれたこの料理には、秋田の厳しい自然と、そこに生きる人々の力強さが、そのまま息づいています。

郷土料理のしょっつる鍋(ハタハタの入った鍋料理)

しょっつる鍋は、秋田県を代表する魚醤である「しょっつる」で味付けをした、ハタハタの鍋料理です。

ハタハタは、漢字で「魚」に「神」と書き、鰰と表されます。ふだんは深海に潜んでいるこの魚が、冬になると産卵のため、大群で一気に沿岸へ押し寄せてくることから、神様が遣わした魚として、古くから敬われてきました。

しょっつるの歴史は、江戸時代初期にまでさかのぼると伝えられ、石川県の「いしる」、香川県の「いかなご醤油」と並んで、日本三大魚醤の1つに数えられています。

1990年代には、乱獲によってハタハタが絶滅の危機に陥り、地元の漁師たちが自主的に3年間の全面禁漁に踏み切るという、世界的にも珍しい取り組みが行われました。

この覚悟ある決断のおかげで、ハタハタは今も秋田の冬の恵みとして、この土地に受けつがれています。

しょっつるの旨味がしみこんだ鍋に、ハタハタと野菜を煮こんだこの料理は「ハタハタがないと正月が迎えられない」と言われるほど、秋田県民の暮らしに深く根づいています。

郷土料理の稲庭うどん いなにわうどん

稲庭うどんは、秋田県湯沢市稲庭町で生まれた、なめらかな舌ざわりとつるつるとしたのどごしが特徴の、手延べの乾麺です。

江戸時代の初め、この地で麺づくりをしていた佐藤市兵衛の技術を、初代の稲庭吉左衛門が受けつぎ、改良を重ねて、今の製法を確立させたと伝えられています。

その技法は長い間、一子相伝、門外不出とされ、宝暦2年には、秋田藩主である佐竹侯の御用達にもなりました。

まさに「殿様のうどん」と呼ぶにふさわしい、格式高い歴史を持っています。

小麦粉と塩水を練り、数時間かけて何度ももみ直し、油を使わず「手綯い」という方法で丁寧に伸ばしていく、その製法はとても複雑です。

そうめんとは違う、しっかりとしたコシと、つるりとした喉ごしは、この手間のかかる製法があってこそ生まれるものです。

冷たいざるうどんでいただくのが特におすすめで、シンプルながらも奥深い、秋田の職人技が生きた一皿です。

秋田県のオススメの食べ物

秋田県の食べ物、思い出すだけで気持ちが高ぶってしまうほど、魅力にあふれています。まず絶対に外せないのが、きりたんぽ鍋です。

比内地鶏から取った、コクのあるだしに、きりたんぽと、ごぼうやせり、まいたけといった秋田の山の幸がたっぷり煮こまれた、体の芯からあたたまる一品。

マタギたちの携行食から生まれたという由来を思い浮かべながら食べると、ひと口ひと口が、より深く味わえます。

冬に秋田を訪れるなら、しょっつる鍋も絶対に味わってほしいです。

ハタハタという、神様が遣わした魚とも呼ばれる存在を、日本三大魚醤の1つであるしょっつるで味付けした、この土地ならではの鍋。

一度絶滅の危機に陥ったハタハタを、漁師たちが自主的な禁漁で守り抜いたという歴史を知ると、その一杯の重みが、まったく違ったものに感じられます。

麺類なら、稲庭うどんが格別です。一子相伝、門外不出で受けつがれてきた、殿様も愛したという伝統の製法から生まれる、あのなめらかな喉ごしとコシは、他のうどんでは決して味わえません。

冷たいざるうどんでいただくのが、特におすすめです。

比内地鶏そのものも、絶対に見逃せません。日本三大地鶏の1つに数えられる、この鶏の親子丼は、噛むほどに広がる旨味が本当に格別です。

そして忘れてはいけないのが、いぶりがっこです。大根を薪の煙で燻してから漬けこむという、燻製の香りが香ばしい、秋田ならではの漬物。

お酒のお供にも、ご飯のお供にも、これほど合うものはありません。秋田県は、山の幸も海の幸も、そして厳しい冬を生きぬく人々の知恵まで、すべてが濃厚に詰まった、食の宝庫だと言えます。

秋田県を訪れる外国人観光客の国籍・傾向

秋田県のインバウンドは、これまで東北の中でも伸び悩んできましたが、ここに来て大きな転機を迎えています。

2024年の1月から4月までの延べ宿泊者数は2万7610人にとどまり、コロナ前の2019年と比べても28.3%減という、唯一のマイナスに苦しんでいました。

しかし2025年3月には、外国人延べ宿泊者数が前の年の同じ月と比べて112.8%も増加し、全国でトップの伸び率を記録するという、驚くべき変化が起きたのです。

この背景には、ローカル鉄道を利用する外国人観光客が2倍に増えたというデータもあり、これまで観光の主流ではなかった、秋田県ならではの素朴な旅の楽しみ方に、新しい注目が集まっていることがうかがえます。

県が2024年12月から2025年2月にかけて実施した大型観光キャンペーンでも、外国人宿泊客が42%増と大きく伸び、その効果がはっきりと数字に表れました。

国や地域別に見ると、台湾からのお客さまが最も多く、香港、中国と続いています。秋田空港へのチャーター便の存在が、この傾向を支えています。

地域別では「十和田・八幡平」エリアや「横手・増田」エリアが大きく伸びており、県立近代美術館で開催されたジブリ展のような、話題性のある催しが、観光客を呼びこむ力になったこともうかがえます。

秋田県はまだ、東北の中でもインバウンドの規模が小さい県です。しかし、これは裏を返せば、これから伸びる余地が大きく残されているということでもあります。

世界文化遺産の縄文遺跡群、乳頭温泉郷の秘湯、なまはげという不思議な来訪神。こうした秋田県ならではの、素朴で奥深い魅力を、これからどう世界に届けていくかが、大きな鍵になります。

事業者が知っておきたい秋田県特有の受け入れポイント

ここまで見てきた秋田県の観光地や、観光客の傾向をふまえて、実際にどんな受け入れの工夫ができるのか、具体的にお伝えします。

まず正直にお伝えしたいのが、秋田県のインバウンドはこれまで伸び悩んできた、という現実です。

しかし、これは事業者にとって、決して悪い話ではありません。他の観光地がすでに競争の激しい状況にある中、秋田県はまだ「これから」の段階にあります。

だからこそ、今から丁寧に受け入れ体制を整えておくことが、これから訪れる観光客の増加を、しっかりと自分の事業の成果につなげる大きな鍵になります。

次に意識したいのが、台湾からのお客さまが、秋田県にとって特に大切な存在だということです。秋田空港へのチャーター便の存在は、これからも秋田県への観光客を支える力になります。

繁体字のメニューや案内表示を用意すること、簡単な中国語のあいさつを覚えておくことは、それだけでお客さまに大きな安心感を与えることができます。

もう1つ、大切な視点が、ローカル鉄道を利用する観光客が増えているという傾向です。

これは、大都市の有名観光地を駆け足でめぐるのではなく、時間をかけてじっくりとその土地の暮らしや風景を味わいたいという、旅の好みが広がっていることを示しています。

乳頭温泉郷の秘湯や、角館の古い町並み、大湯環状列石といった、静かで奥深い魅力を持つ場所は、まさにこうしたお客さまの心をつかむのにぴったりの観光資源です。

駅や観光案内所での多言語対応、ローカル線の乗り方をわかりやすく伝える工夫が、これからますます重要になります。

そして、なまはげや竿燈まつりといった、秋田県ならではの伝統行事を、しっかりと伝える工夫も欠かせません。

なまはげが、怠け心を戒めながらも、無病息災や豊作をもたらしてくれる、ありがたい来訪神であるという背景を添えて紹介するだけで、その存在が、より深く記憶に残るものになります。

最後に、きりたんぽ鍋やしょっつる鍋といった、秋田県ならではの食文化を伝える工夫も大切です。

ハタハタを守るために漁師たちが自主的に禁漁を選んだという歴史を添えて紹介するだけで、一杯の鍋が、忘れられない旅の思い出に変わります。

秋田県の観光地で使える補助金・支援制度

インバウンド対応を進めるには、費用がかかります。ここでは、秋田県の事業者が活用できる、代表的な補助金や支援制度をご紹介します。

補助金の内容や金額は毎年見直されるため、実際に申請する際は、必ず最新の情報を公式の窓口で確認してください。

宿泊事業者経営力強化支援事業費補助金

これは、秋田県が用意している補助金です。冬季宿泊客の増加やインバウンド誘客の促進を目的とした、宿泊サービスの高付加価値化にかかる費用を支援してくれます。

露天風呂付きの客室といった高単価な客室の整備や、インバウンド向けの客室の整備、バリアフリーやペット対応施設への改修などが対象になり、補助率は2分の1以内、補助上限は750万円です。要件を満たせば、上限が1500万円まで広がります。

このほかにも、従業員寮や休憩室の新設・改修といった、人材確保に向けた取り組みも支援の対象で、補助率2分の1以内、補助上限600万円が用意されています。

募集期間が決まっているため、県のホームページなどで、最新の募集状況を確認することをおすすめします(2026年7月時点の情報のため、内容は変わる可能性があります)。

市町村の独自の補助金

秋田県内の各市町村でも、独自の補助金が用意されています。

例えば、地域の人材不足対策として、新たに外国人材を雇用する事業者を支援する助成金や、新規事業や生産性向上に取り組む事業者を後押しする補助金などがあります。

事業を営んでいる市町村の商工会や商工課に、どのような補助金があるか、問い合わせてみることをおすすめします(2026年7月時点の情報のため、内容は変わる可能性があります)。

訪日外国人 旅行者受入 環境整備 緊急対策事業費 補助金

これは、観光庁が用意している全国向けの補助金です。

宿泊施設向けのインバウンド対応支援事業では、Wi-Fiの整備や多言語対応のフロント設備、キャッシュレス決済端末の導入などが対象となります。

全国の事業者が申請できる制度のため、まずはこの補助金から検討してみるのがおすすめです(2026年7月時点の情報のため、内容は変わる可能性があります)。

相談窓口の活用も大切です

補助金は種類が多く、条件も複雑です。どの補助金が自分の事業に合っているのか、判断に迷うことも多いはずです。

そんなときは、商工会や商工会議所、そして中小企業庁が認定する「よろず支援拠点」といった、無料で相談できる窓口を頼るのがおすすめです。

秋田県は、これからインバウンドが大きく伸びていく可能性を秘めた県です。世界文化遺産の縄文遺跡群や、乳頭温泉郷の秘湯、なまはげという独自の文化まで、他の地域にはない魅力があります。

こうした補助金や支援制度を上手に活用しながら、それぞれの事業者が、外国人観光客を迎える準備を、着実に整えていくことが、これからの秋田県の観光を大きく育てていく力になります。

秋田県の魅力を世界へ届けるために事業者ができること

秋田県には、日本一深い田沢湖の神秘、乳頭温泉郷の素朴な秘湯、そして世界文化遺産の縄文遺跡群まで、他の都道府県にはない、豊かな自然と文化が集まっています。

なまはげという不思議な来訪神、竿燈まつりの勇壮な姿、きりたんぽ鍋やしょっつる鍋といった郷土の味も、秋田県の大きな魅力です。

秋田県のインバウンドは、これまで東北の中でも伸び悩んできましたが、2025年3月には外国人延べ宿泊者数の伸び率が全国トップを記録するなど、大きな転機を迎えています。

台湾を中心としたお客さまに加えて、ローカル鉄道を利用する観光客が増えていることは、秋田県ならではの、素朴で奥深い魅力への注目が高まっている証だと言えます。

事業者にとって大切なのは、これから伸びるインバウンドに向けて、今のうちから丁寧な受け入れ体制を整えておくこと、台湾のお客さまへの多言語対応、そしてじっくりと旅を楽しみたいお客さまに向けた、静かで奥深い魅力の発信です。

秋田県の宿泊事業者経営力強化支援事業費補助金や、各市町村の独自の補助金をうまく活用すれば、費用の負担を抑えながら、その準備を進めることができます。

秋田県が持つ素朴で力強い自然と、脈々と受けつがれてきた伝統文化に、事業者1人ひとりの丁寧な受け入れの工夫が積み重なったとき、秋田県はさらに多くの外国人観光客に選ばれる場所になっていくはずです。

この記事を書いた人

旅行、観光、IT・Webマーケティングの仕事に25年ほど携わってきた40代。現在はインバウンド対応に悩む店舗・宿泊施設の方々に向けて、実際に使えるツールや方法をまとめています。導入コストや使い勝手を含めて丁寧に検証することを心がけています。